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【今月のダラクシー賞】-「GALAC」2020年1月号

老舗番組にモノ申す
「情熱大陸 『所ジョージ』」
(毎日放送 10月27日放送)

桧山珠美

何を隠そう、昔から所ジョージには一目置いている。ことさら自分を主張するわけでもなく、人を貶めることもない。Tシャツに綿パン、ときどきスカジャンというラフな出で立ちに違わず、いつでもどこでも自然体。テレビのなかの所さんはとにかく愉しそう。

BSフジ「所さんの世田谷ベース」などを見ていると、よくもまあこんなに次から次へと面白いことを見つけてくるもんだと感心。「遊びをせんとや生まれけむ」を地で行き、しかも、それがすべて仕事になるという、まったくもって羨ましい存在だ。
そんな所さんが「情熱大陸」に出演すると聞き、正直なところ「いまさら?」と思った。実際、VTRのなかで共演者の久本雅美が「『情熱大陸』遅くない? 所ジョージだよ」とカメラに向かって言い放っていたし。が、あえてこの時期に取り上げるということは、なんらかの理由があるに違いない。

「所ジョージは、なぜ人々に愛され続けるのかそのヒミツを解き明かす――」。かねてから、所ジョージだけ、所さんと“さん”づけで呼ばれるのが不思議でしようがなかったが、この番組でその謎が解けるのではないか、と期待は高まる。

「平成30年のうち、もっともCMに起用されたタレント」「レギュラー9本のうち、6本がタイトルに名前が載るいわゆる冠番組だ」とか、そんなウィキペディアに載っているような情報で始まった番組。所さんにタイトルバックを書かせるが、“北野武”“ドナルド・トランプ”とまずはおふざけ。「肩書が出るんです」とスタッフに注意され、「じゃあ楽しい人がいいじゃん」と言い、“めんどくさい男 所ジョージ”“本物感 所ジョージ”“ただよう人 所ジョージ”と書き殴り、「テレビの人でいいよ。テレビに向かって何かやるんだから」と。ここで、葉加瀬太郎の手による例のオープニング曲が流れ、番組はスタートした。

う~ん。残念ながら、内容はというと、いつもの所さんであり、なにひとつ新しい発見といえるものはなかった。当然ながら、いま所さんを取り上げた理由も不明。そもそも、密着取材自体2、3日か多くて1週間程度くらいのもので、最初から期間限定で撮った感ありあり。いい画が撮れるまでもっと粘るとかしないんかい。

エンディングに葉加瀬太郎の『エトピリカ』が流れればなんとかなると思ってやいませんか。番組開始当初の「情熱」はどこへやら、ということで、今月のダラクシー賞を贈る。

~著者のつぶやき~
八千草薫さんが亡くなった。「阿修羅のごとく」「岸辺のアルバム」「俺たちの旅」「うちのホンカン」……大好きな作品が多すぎる。今、お気に入りの漫画『傘寿まり子』を八千草さんでドラマ化してほしかった。合掌。

★「GALAC」2020年1月号掲載