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【今月のダラクシー賞】-「GALAC」2020年5月号

ガチャはガチ?…ガチャンと崩れた信頼
「10万円でできるかな 1000円ガチャ散歩SP」
(テレビ朝日 3月16日)

桧山珠美

自慢じゃないが私はガチャラーだ。安室奈美恵ファンをアムラー、マヨネーズ好きをマヨラーとするなら、ガチャガチャ好きはガチャラー。ガチャガチャとは、スーパーやゲームセンターの店先に置かれたカプセルトイのことで、ガチャやガチャポンともいう。

それをテレビで広めたのは「モヤモヤさまぁ~ず2」(テレビ東京)だろう。街歩きの途中に1000円ガチャを見つけてはやるのがお約束になった。そうこうしているうちにこの「10万円でできるかな!」が誕生。ただし、こちらはガチャガチャばかりをやるわけではなく、宝くじ企画や福袋企画などもあるが……。

要は「10万円で宝くじを買ってみた!」とか「10万円で福袋を買ってみた!」などという、ネタに行き詰まったユーチューバーがやりがちな企画。ユーチューバーがさんざんやり倒していることを、何をいまさらと当初は批判的だったが、見れば見たで、どんな賞品が出てくるのかと食いついてしまうのは、ガチャラーの悲しい性。それだけでなくガチャガチャに一喜一憂するキスマイ(Kis―My―Ft2)の一生懸命な姿に好感がもてるからだ。

これまでもキスマイの存在は知っていたが、メンバー7人の名前と顔も一致しなかったし、そこからイケてる3人と舞祭組(ブサイク)4人に分かれると言われても、その差もわからないし、いまいちピンとこなかった。それが、この番組を見るうちにそれぞれの名前と顔だけでなく、キャラの違いもわかるようになった。そういう意味では、SMAPにおける「SMAP×SMAP」のような番組に成長するかもしれないと思っていた矢先……。

例のやらせ報道だ。宝くじを10万円分以上買っていたとか、農作物を育てる企画で、きのこを原木に貼りつけたとか。宝くじのほうは当選の傾向を調べるために買ったものという話だが、それもなんだかなぁだ。

こういう企画はガチだから面白い。たしかに高額当選がなければ盛り上がりに欠けるが、そんなことだってある。それを徒に盛り上げようとするからおかしなことになるのだ。今回も1000円ガチャでダイソンの掃除機が当たったが、これもやらせかも!?と疑ってしまう自分が悲しい。こんな女に誰がした、だ。

あんなに楽しかった番組が……。裏切られたら記憶はそう簡単に消えるものではない。だからこそ番組は誠実に作らなくてはいけないのだ。不倫夫を許せない杏の気持ちがよくわかる、ということで今月のダラクシー賞を贈りたい。

★「GALAC」2020年5月号掲載