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【今月のダラクシー賞】-「GALAC」2020年8月号

首を長〜く…する前に満腹!?
「麒麟がくるまでお待ちください 戦国大河ドラマ名場面スペシャル」
(NHK)

桧山珠美

大河ドラマ「麒麟がくる」が第21回「決戦!桶狭間」(6月9日放送)を最後にしばし放送休止となった。新型コロナの影響で撮影が中断されたためで、その間、過去の大河ドラマの再放送でも見せてお茶を濁しておくか、という腹積もりのようだったが、このお茶がことのほか旨く、ペットボトルのお茶に慣らされていた身に沁みること沁みること。
番組自体はいたって平凡なもので、リモート出演のゲストとともに、大河ドラマの名場面を見ようという趣向。14日放送「独眼竜政宗」の回は、時代劇系バラエティタレント!?の高橋英樹、大河ドラマをものまねで再現させたら日本一!?の松村邦洋、伊達政宗の末裔!?のサンドウィッチマン・伊達みきお、コンビ名でキャスティング!?の麒麟・川島明の4人。翌週の「国盗り物語」では、伊達の代わりに、近藤正臣が出演した。1週1作品で、「独眼竜政宗」「国盗り物語」「利家とまつ」「秀吉」と続く。「独眼竜政宗」と「国盗り物語」を視聴したが、そのド迫力に圧倒されっぱなし。そうそう、これこれ、これこそが大河ドラマ!と興奮した。
「独眼竜政宗」ではまだ“世界のケン・ワタナベ”と言われる前の初々しい渡辺謙(当時なんと28歳)演じる伊達政宗が、勝新太郎演じる秀吉と初めて対面するシーンを見せていたが、勝新“秀吉”の貫禄たるや……。“猿”のイメージなど1ミクロンもなく、同じ猿でも東山動物園のイケメンゴリラ「シャバーニ」級。その眼力と匂い立つ色気に惹きつけられた。途中で、さっさと「ポツンと一軒家」(テレビ朝日系)に替えるつもりだったが、そんな隙など与えない画面の“圧”が凄かった。
さらに翌週の「国盗り物語」。平幹二朗演じる斎藤道三と高橋英樹演じる織田信長、そして、近藤正臣演じる明智光秀に焦点を当てた物語だ。今でこそなんと豪華な配役陣と思うが、当時、高橋28歳、近藤32歳とまだまだ若手にもかかわらずベテランの風情。
信長の最期、本能寺のシーンや、農民たちの落ち武者狩りに遭い、無残に朽ち果てるシーンまで、これから出てくるであろう「麒麟がくる」のクライマックスシーンの数々に、おなかはもういっぱいに。名場面が目に焼き付いて離れやしない。
良き時代の大河ドラマを堪能させてもらったのは有難かったが、こんなにハードルを上げて大丈夫!? 「麒麟〜」の続きはさぞや凄いんでしょうねということで、今月のダラクシー賞を贈る。

~著者のつぶやき~
個人的にもう一度見たい大河ベスト3は「国盗り物語」「風と雲と虹と」「黄金の日々」。次点で「新選組!」です。

★「GALAC」2020年8月号掲載