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【今月のダラクシー賞】-「GALAC」2020年9月号

秋から3時間に放送拡大の悲報!
「バイキング」
(フジテレビ)

桧山珠美

新型コロナウイルスのおかげで、ただでさえ鬱陶しい毎日なのに、それを上回るようなうざいニュースが飛び込んできた。フジテレビの「バイキング」が、秋から1時間延長し、3時間になるというのだ。それにともない、「直撃LIVE グッディ!」は9月末で終了するとか。一部、どこかの女性週刊誌に、「『バイキング』9月で打ち切り」とあったものだから、小さく「よっしゃー!」とガッツポーズしていたのに、それが一転、1時間延長って……。
別に坂上忍に恨みがあるわけでも、安藤優子に恩義があるわけでもないが、「バイキング」の1時間延長はさすがにキツい(あくまでも見るほうが)。仮にも「グッディ」は“直撃LIVE”とタイトルにもあるように、リポーターやスタッフが現場に出向いて取材をしていたわけだが、「バイキング」はというと、話題のニュースや出来事を新聞・週刊誌・ネットの記事をまるっと入れて大きなパネルに書き写し、榎並大二郎アナが延々読み上げる、なんともアナクロな手法。みのもんたが得意としていた懐かしのザ・昭和スタイルだ。イマドキ「放送大学」でも、こんなに活字を追うことはないだろう。
なかには、ほかの番組で誰かがコメントしたこともしれーっと引用。番組のプライドは皆無のよう。たまに取材VTRが出たかと思えば、街の人たちへのインタビュー。それもお台場界隈か、新橋・銀座と近場で。今なら「Go Toキャンペーンどう思う?」などと聞き、ほんの数人の意見を国民の総意のように見せるイリュージョン。海外の芸能人ゴシップなども扱い、「ジョニー・デップVS.元妻ドロ沼バトル不倫横領ねつ造法廷で衝撃証言」などというニュースも報じる。で、その映像には必ずといっていいほど「スペクター・コミュニケーションズ」の文字が入る。調べてみたら、デーブ・スペクターの事務所で、海外セレブの映像はそこから調達している模様。あとはスタジオに集結した専門家と、タレントコメンテーターたちによるおしゃべり大会。報道番組の皮をかぶったバラエティ、をいいことに、やりたい放題だ。
「グッディ」に比べれば、人件費も制作費も安上がりでこんなにいい番組はない(局にとって)。たとえ1時間の延長をしたところで、大変なのは、巨大ボード作成担当の美術さんくらいのもの。
どうか美術さんが腱鞘炎になりませんように、そして安藤優子の生霊が成仏しますように、という祈りとともに、今月のダラクシー賞を贈る。

~著者のつぶやき~
風の噂で10月からは「バイキング」の制作がバラエティ班から情報制作局に移るとか。吉と出るか、凶と出るか。これは楽しみ。

★「GALAC」2020年9月号掲載