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『GALAC』2021年6月号「旬の顔」
町田啓太インタビュー

【ロングバージョン】
「チェリまほ」が僕にくれた自信。

インタビュアー 西森路代

「チェリまほ」との出会い

――ギャラクシー賞の受賞のことを、いろいろなところで語ってくださってありがとうございます。

町田 今まで賞という形のものをいただくことがあまりなかったので、受賞自体も嬉しかったですし、評価していただいたことで、さらに作品を知ってくださる方も増えるので、それも嬉しかったです。

――その「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」の出演の話をもらって、これは良い作品になるんじゃないかという予感を感じたのはどの段階でしたか?

町田 お話をいただいたときに、プロデューサーの本間(かなみ)さんから、とても丁寧な企画書をいただきました。本間さんの熱量というか、丁寧に作品化しようとしている気持ちが伝わってきまして、そこでありがたいお声がけをいただいたなと思いました。内容を見てみると、ポップな日常の中にも、愛の形を描いている優しい物語だなと思いました。僕自身、そういう優しい物語が好きなので、これはぜひ関わらせていただきたいなと思いました。

その後も、本間さんから改めて丁寧なお手紙をいただきまして。そこには「良いものを作りたいので、何かありましたらなんでも言ってください」ということが書かれてあったので、僕のほうからも、「原作も素晴らしいので、その雰囲気を大事にしながら、ぜひやらせていただきたい」という返事を、マネージャーさんを通して伝えてもらいました。

風間(太樹)監督にもその後お会いして、監督も本当に丁寧にいろんなことを話してくださる方で、話が進めば進むほど、いい現場に関わらせていただいてると思えました。だから、今思い返すと、最初から良いものになると感じていたんだと思います。

――台本はどのように渡されましたか?

町田 クランクインする前に全話の台本をいただいていました。今、なかなか全話の台本をいただいてから撮影に入ることって少ないんですけど、12話全体が見えていたのはすごくありがたかったです。もちろん、要所要所、手直ししながらやる部分もありましたけど、物語を全部通して知った上で演じられると、このシーンは全体像の中で、どこからどこまで切り取っているかが把握できるし、その前に何があって、それがあったからどこに向かうのかを、共通認識として持った上で演じられるのがよかったです。監督やプロデューサーや共演者とも話しやすいんですよね。

ドラマの撮影は、他の現場もそうですけど、前後しながら撮影するものなので、そういう前後した撮影でも、整理しながら演技ができたというか。この物語は特に、ほんのちょっとしたところの解釈の違いで、見え方が変わってしまう可能性もあったので、台本も早い段階でいただけたのかなと思いました。スタッフの皆さんのそういう配慮もうれしいものでした。

「チェリまほ」現場で大切にしたもの

――個人的には、第一話を見たときに、コミカルなところもあって楽しいドラマだと思っていたら、最後に黒沢が安達にマフラーを巻いてあげるときの心の声にぐっときました。そこは、赤楚さんと話し合いながら撮影したと聞きました。

町田 やっぱり、一話は導入になるので重要でしたね。この物語はどういうものなのか、どういう表現でお見せするのかということが伝わらないと、せっかく素敵な物語なのに、この先、楽しんでもらえないと思いました。マフラーのシーンは、本当に黒沢が安達のことを思っている、尊重していて大事に思ってる、それがすごく出る場面でしたね。

あのシーンでは、距離感というものを大事にしていて、安達と黒沢が、このくらいの距離だから、こういう話ができるんだなという認識で演じていました。マフラーのときは、少し距離が詰まったから、ここまで出来るなと。そこから安達も離れて、黒沢はもう少し引き留めたいと思ってるなとか、そういう心理的なところからくる距離感って、ほんの少しで違ってくると思うので。一歩前に行く、一歩引く、それだけでも違うということを、風間さんも気にしてくださって、僕らにも聞いてくださいました。本当にたくさん相談しながら演じました。

それと同時に、黒沢は安達のセーフティゾーンには土足で踏み込まないということも大事にしないといけないから、その辺でも距離感を大事にしないといけませんでした。この距離まで近づくのに、どのくらいの年月、安達のことを思い続けていたのか。一話は、そういう細かい蓄積から来る話だったんですよね。黒沢のほうからしたら近づけたけれど、安達は少し離れたいし、でも心が読めるようになって本心を聞いてしまったから、距離が目に見えて縮んでないかもしれないけれど、ちょっとだけ近づけたっていうところを見せたかったので、赤楚君にもどうかな?って聞いたりして。その間、スタッフの皆さんをお待たせしたときもありました。

それと、ロケ場所の近くを電車が通っていたこともあったので、実はそのシーンは生かせるとこは生かしつつ、アテレコも多かったんです。後日、赤楚くんと2人で録音ブースに入って、その撮影のときのことを思い出しながら、かけあいをしていましたね。

――アテレコのときは、赤楚さんは息遣いに気を付けたということでしたが、町田さんはどんなところに気を遣いましたか?

町田 息遣いもそうなんですけど、アテレコになると、演じたときの距離感がわからなくなってしまうんです。そのとき、安達はどのくらいの距離にいたっけと。ブースの空間も狭いので、それを思い出しながら声を出すのが難しかったです。声もこもったりするので、風間さんからは「声を飛ばして」と言われたりして、難しかったけど、声の出し方の勉強にもなりました。

――きっと、印象に残ったシーンとか、好きなシーンとかについては何度も聞かれていると思うので、角度を変えて。この作品って、登場人物のそれぞれの価値観がいいなと思って見ていたんですが、町田さんは、どの人のどういう価値観をいいと思いましたか?

町田 そうですね。僕も、このドラマの登場人物には、それぞれの価値観があって、そこが魅力だなと思いました。そして、それぞれの価値観を勝手に第三者が否定しなくて、それをキャッチしたり、受け入れたり、リスペクトすることが素晴らしいことなんだなと学べました。だから、黒沢を演じているときには、安達に対して好意はあるけど、それを押し付けたりしないところがいいなと思いました。黒沢が心の中で思っている分にはいいし、それが笑いにつながったりするし、それも真剣な心の声なんだけど、実際の行動としては、安達が嫌だなと思うことは、敏感にキャッチして、それ以上のところには踏み込まない。でも、踏み込みたいときには、安達にちゃんと聞くし、きっちりとコンタクトをとって確認をしていました。それって、実際の日常生活でも必要なことだし、そういう気持ちを持っていたら、社会に起こる問題も少しは減ってくるのかなと思いました。

町田啓太と黒沢優一の共通点

――町田さんの言動を見ていても、そういう感覚は以前からありそうなのかなと思いますが、いかがですか?

町田 あります。やっぱり、知ろうとしてくれる嬉しさもあるんですけど、何か別の場所で知った情報で印象を決められたりするのは自分も嫌だなと思うこともあります。そういう価値観は、黒沢とも共通してるところが多くて、共感できる部分がたくさんありました。

最近、すごくいいなと思ったことがあったんです。別の作品で、撮影に入る前に、ハラスメント講習会があって。そういうことって海外ではあったりとか、日本でも企業によってはあると聞いたことはあったんですけど、僕は初めてで。その中で、講師の方が、「何をするにも、他者に対して尊重するという気持ちをまず持ってください」と言われていて、それは間違いないなと思いました。

そういうことが「チェリまほ」の作品とも繋がっていて。お互いを尊重しあっているところがいいなと。僕にもできてないことがたくさんあったなと思えて、視野がすごく広がりました。

――この作品の後半のテーマのひとつになるのが自己肯定感でした。ドラマの中では、安達の自己肯定感に焦点が当たっていましたが、町田さん自身も、自己肯定感が持てなかったということもありましたか?

町田 僕にもよくわかる話でした。安達の場合は、自分を本当の意味で好きになれていないということがあったと思うんですね。そこは、少なからず僕にもありますし、人それぞれなにかしらあると思うんですね。自分で自分を肯定するのは勇気もいるし大変なことで、安達の場合は黒沢が肯定してくれることで、自分のことを認められるようになって。そして自分を肯定できるようになることで、今度は他者も肯定することにつながるのかなと。それが当たり前のようでいてなかなか気づけなかったんだと思うんです。僕も、そういう安達の姿を見て、そうだよな、そうあるべきだよなと思いました。

――町田さんは、そういう部分で黒沢と重なる感じはありますね。表面的なイメージで持ち上げられて、謙遜をするシチュエーションとかもありそうな…。

町田 それを素直に嬉しいという気持ちもあるんです。でも、外見的なことで褒められるシーンが黒沢にもありましたけど、僕もそういう経験はありましたし、そこはやっぱり表面的ではないところで評価されたいということは、わかる部分でした。

実は今回、ギャラクシー賞の月間賞をいただけたのは、本当に勇気をもらえました。ちゃんと自分のやることをやっていけばいいんだと思いました。それと、ほかの作品でもそうですけど、「チェリまほ」で本間さんや風間さんが、本当に僕の話をよく聞いてくれたんですよね。そこまで聞いてくれなくてもいいのにっていうくらい聞いてくれたのが本当に嬉しくて。そのことでも自分を肯定されているような気持ちになりました。褒められるとかそういうのではなく、自分の話に耳を傾けてくれる、寄り添ってくれることも、僕の中では肯定されてるんだなって思いました。

――それと、あれですね。作品を認められて賞をもらうことって、その作品の中身や作ってきたことの結果を褒めてもらっていることだから、謙遜しなくていいですもんね。

町田 そうですね本当に。単純に嬉しいですね。自分ひとりじゃないのがうれしいし、みんなで喜べるから。受賞したときは、「よかったね」とみんなで連絡をとりあったし、そこに関われた自分も肯定されましたし。

――この作品がずっと続けばいいなと思っているファンも多いとは思いますが。

町田 こればっかりは、僕だけではどうにかなることではないのですが、もしもこの続きがあるとしたら、また一からみんなで作って行けばいいと思うし、もしもなかったとしても、この世界をそのままに楽しんでもらえたらなと思っています。

子ども時代、大学時代

――少し作品以外の話になりますが、町田さんは群馬県出身ということで、実際に大学で上京してきたときはどんな感じだったんですか?

町田 みんなそうだと思うんですけど、人は多いし、忙しそうにしてるなって思いました。それまでの自分のペースとかなり違う感じで、右へ倣えって感じはありました。

――急に出てきて、大学では都会的にふるまおう、みたいな気持ちもあったんですか?

町田 ありました(笑)。大学が体育大だったので、みんなジャージで来てたので、よかったなって安心したところはありました。でも、お洒落な人もいたし、ダンスもやってたんで、いろいろ調べて頑張ったりもしたんですけど、センスがなかったですね(笑)。今はファッションの情報をくれる人とも関われるようになったけれど、当時は情報も少なかったなって。

――町田さんの大学時代は?

町田 ダンスが好きっていう共通項が周りにもあったので、いろんなところから来ている人ともシンパシーがあって仲良くしてもらってたんですけど、大学二年の終わりくらいからこの仕事を始めたので、環境が変わって、なかなか皆と逢えなくなったりはしましたね。

――それと、群馬の時代は、映画を見に行くのが楽しみとお聞きしました。

町田 小学生の頃ですね。500円でどこまでも行けるというフリー切符で、一時間かけて映画館に行ってました。そういうのって大抵夏休みとか大型連休に行くので、『ドラえもん』とかディズニーのアニメとかを見てて、夢があるところが好きでした。

――近年で印象に残っている日本映画はなんですか?

町田 日本映画でも『万引き家族』を見たときは、海外だと社会派で世の中に対して作品を作る意義のあるものって多いけれど、日本ではまだ少なかったと思うので、この映画は、しっかり問題視されていることを描いていることが凄いなと思って、見終わった後、ぼーっとして、歩いて帰りましたね。最近はそういう社会派の作品も増えてきているので、映画を作っている方たちがたゆまぬ努力をしているんだなと思いますし、自分もそういうところに携われるといいなと思いますね。先輩の俳優でも、映画作りに一から関わってる方もいらっしゃって、それって素晴らしいと思いますし、僕も何か、一から携わりながらやっていきたいという気持ちもありますし、今後、そういう人も増えてくるんじゃないかと思います。

大河「青天を衝け」への意気込み

――これまでも、様々な役を演じられてきましたけど、これからはどんな役を演じてみたいですか?

町田 たくさんありますけど、ホームドラマも社会派でメッセージのあるものにもチャレンジしたいです。もともとSFが好きなので、それもがっつりやってみたいなって。それは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』から来てるんですけどね。

――それと、これまでに町田さんが演じてきたもので言うと、コミカルな演技も定評があって、本間さんに『GALAC』の取材でお話を聞いたときにも、『PRINCE OF LEGEND』の結城先生の話も出たりしまして。私も『前田建設ファンタジー営業部』の掘削オタクのヤマダの役に大いに笑わせてもらいました。町田さんの、笑わせようとしていないのに面白いところがいいなと思っているんですが、コミカルな役を演じるにあたって、何か考えているところはありますか?

町田 確かにコミカルなシーンを演じていると一ミリも思わずに演じています。きっと、その本人もなぜ笑われているかわからないんだと思いますし、そういうときに笑いって起こるじゃないですか。画面の中では真剣なのに、それを通して見た人は笑ってしまう。アプローチとしては、コメディと思わずにやっています。

――『前田建設』では台詞も多くて大変そうでしたね。

町田 ずっと練習していました。全部、意味を理解していないといけないので、調べたりもしました。でも台詞が入ってくるとすごく楽しいんですよ。それに、あんな風にいろいろ説明してしまうのも相手に対しての好意があってこそだと思うんですよ。相手が知ろうとしてくれるからこそ、返してあげようと思ってああなってしまう。あの撮影のときは、長いシーンを演じていて、カットがかかる手前で監督や助監督の「アハハ」っていう笑い声が聞こえてくると、これでよかったんだと思えたし、楽しかったですね。

――町田さんは、ヤマダみたいに夢中になってしゃべってしまうようなところもありますか?

町田 あると思いますね。好きな作品の話とかは止まらなくなるので、マネージャーさんから「もういいです」って言われることもあります(笑)。

――そして5月からはいよいよ大河ドラマ「青天を衝け」への出演ですね。土方歳三に対しては、どのようなイメージで挑んでいますか?

町田 やっぱり「鬼の副長」というワードのイメージが強かったですね。いろいろ読んだり調べたりしていると、どちらかというと経営者に近いところもあるのかなという。近藤勇が局長で、土方は、近藤を表に立たせながら、隊をまとめていた存在でもあって、機転も聞くし、大胆なところもありつつ、自信がある人なんだなということはすごく感じました。自信というのも、ちゃんと自分のことを信じている、自分の進むべき道を信じているという感じです。だからこそ、周りから恐れられたりする部分もあったんだろうなと。

僕の中では、土方さんへの共感というと、田舎出身ということなんですよ。僕も田舎出身で上京してきたので。この物語での土方の役どころでいうと、渋沢との関わりが大事で。でも、一般的には、土方と渋沢ってどんな関わりがあったんだろうと思う方も多いと思うんですけど、文献にはちゃんと2人の関わりが残っていて、その関わりの中でも、田舎の出身だということでのシンパシーがあったんじゃないかという説もあって。確かに、田舎出身ってだけで、上京してきた者同士、話が盛り上がったりしますよね。「チェリまほ」でも、風間さんともそれで盛り上がったし、人間味も感じたりしたし、今回の「青天を衝け」でも、そんなところを足掛かりに、僕なりの新しい土方像を表現出来たらいいなと思います。僕自身、時代劇が好きで、またチャレンジしたいという思いがあったので、その最高峰の中でやれることもわくわくしています。(終)

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