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【ギャラクシー賞テレビ部門1月度月間賞】-「GALAC」2023年4月号

視聴者を救う「底抜けの明るさ」

「ゴールデンラヴィット!」
12月28日放送/21:00~23:47/TBSテレビ

「ラヴィット!」が始まった当初、おそらく多くの視聴者は、前番組との落差に戸惑ったに違いない。なぜ朝から人気スイーツのランキングを見なければならないのか。なぜ朝から芸人たちの大喜利を見なければならないのか。コロナも収まっていないのに。ロシアによるウクライナ侵攻も続いているのに。時事問題を扱わず、天気予報もないこの番組に、違和感があった。けれども、近頃は、こんな朝番組があってもよいのではと、不思議と思うようになってきた。
この背景には、社会的な閉塞感のようなものがあるのだろう。コロナで文字通り行き場を失い、情報に疲れた私たちは、ただただふざけて笑い合うこの番組を見ると、どこかホッとさせられる。奇をてらおうとか、斜に構えることもなく、MCや出演者、スタッフらが全力で楽しんでいる。朝っぱらから流れてくる、この底抜けの「明るさ」が、視聴者の救いになった。
視聴者プレゼントのキーワードをハッシュタグ化し、ツイッター上でトレンド入りさせたり、オープニングトークがどんどん長尺化したり、MC二人が休養したときもさまざまな代打MCを立てて話題となった。何か決まった型があるわけでなく、自由に、生放送ならではのハプニングを楽しみ、遊んでいる。この内容で朝の時間帯に編成したところが、革新的だった。
「ゴールデンラヴィット!」は、初のゴールデン年末特番として、3時間生放送された。朝の雰囲気そのままに「もっとも忘れられないラヴィット!2022」のトップ10を発表していく。へい!オプティマスプライム、伝説の8日間、山添寛、ラヴィット!が終わった日、嶋佐OASIS……。最後は、テーマ曲を歌うサンボマスターの生歌披露で、大団円。これぞ、テレビと言うほかなかった。まるで文化祭の後夜祭のようで、見終えた後も余韻が続いた。「笑っていいとも!」でも「オールスター感謝祭」でもない、「ラヴィット!」にしか醸し出せない雰囲気を確立したのではないか。コロナ禍が生んだヒット番組の一つだろう。これから年末の風物詩になるかもしれない。(松山秀明)

帝銀事件の真相に肉薄した力作

NHKスペシャル 未解決事件 File.09 松本清張と帝銀事件
第1部 ドラマ「松本清張と『小説 帝銀事件』」
第2部 ドキュメンタリー「74年目の“真相”」
第1部 12月29日放送/21:00~22:30  第2部 12月30日放送/21:00~22:00  日本放送協会

1948年連合国軍の占領下で起きた「帝銀事件」。銀行員らに液体を飲ませ12人を殺害したとして死刑判決を受けた画家・平沢貞通は、無実を訴え続け獄中で死亡した。この事件の真相に、第1部はドラマで、第2部はドキュメンタリーで迫る。
第1部では、1957年に作家として名を轟かせ始めていた松本清張が、平沢は真犯人ではないと疑いを抱いて文藝春秋の編集長・田川博一と真実に迫ろうとする姿を描く。松本は、凶器の毒物が遅効性のもので、判決で認定された即効性のある青酸カリではないのではないかと考える。そして、警察が旧日本陸軍で細菌兵器の開発を進めていた731部隊に捜査の重点を置いていたことを突き止める。しかし、なぜ捜査は方向転換したのか。松本はGHQ連合国軍総司令部が人体実験などのデータを入手するため、731部隊の関係者と裏取引をして警察や報道機関に圧力をかけたのではないかと推測するが、関係者の口は固く確証はとれない。松本は帝銀事件をノンフィクションで書きたいと田川に迫るが拒否され、結局小説として発表した。
第2部では、事件から74年経って明らかになってきた事実を積み重ねていく。門外不出だった平沢が事件を再現したフィルムでは、ピペットの持ち方や薬品の飲み方の指示が生存者の証言と食い違うことが明らかになった。当時の捜査一課係長が残した捜査手記からは、731部隊の石井四郎部隊長が「俺の部下にいるような気がする」などと供述し、容疑者と似ている憲兵の存在も明らかになる。公文書を調べたアメリカ人ジャーナリストは、GHQが731部隊に関する報道をさせないようストップをかけていたと話す。
番組は、旧日本陸軍の関係者が関与していた疑いがあり、平沢は冤罪の可能性があると示唆している。事件で娘を亡くした父親は「帝銀事件という出来事も間接には戦争の生んだ犠牲の延長と私は考えざるを得ない」と語っていた。戦後占領期の日本や旧日本陸軍の闇を描き、帝銀事件の真相に肉薄した番組として評価したい。(石田研一)

言葉を守るプロフェッショナル

プロフェッショナル 仕事の流儀
「縁の下の幸福論~校正者・大西寿男~」
1月13日放送/22:00~22:45/日本放送協会

「縁の下の力なし」。誰が言ったか校正者を称した諺だという。「縁の下で、自分たちがやってることにすごくプライドというか、誇りも自信もあるんですけれど、でも、自分たちがやっていることっていうのは、本当に何の決定権もないし、もうできることは限られているし。そのへんの“自負”と“憐憫”みたいなものがよく表れている」と、この日の主役、フリーランスの校正者・大西寿男は語る。
一般に、校正の仕事は誤字脱字をチェックする地味な仕事と思われがちだ。番組はそんなイメージを覆す。大西を「指名殺到の校正者」「出版の世界で唯一無二の信頼を得る“言葉の守り手”」と、まるで出版界に現れた救世主のように紹介するのだ。いささか大袈裟過ぎる表現に戸惑い、眉に唾をつけながら見たが、看板に偽りなし。その仕事ぶりに感服した。
すべての文字情報に目を通し、誤字脱字や表記の誤りを確認する。さらに記された情報が正しいかどうかをファクトチェック。それだけでなく、書き手の思いを汲み取り、時には文章の表現にまで深く踏み込んでいく。一切の妥協を許さず、真摯かつ誠実に原稿と向き合う姿勢に、こちらの背筋も伸びた。これぞ「プロフェッショナル」の仕事だ。
自身の仕事を「積極的な受け身」と表現する大西。「与えられた受け身ではなく、自分で選び取った受け身であるからこそ、役に立てることがあると信じて、いつもそのことを忘れないでいること」と、番組のラストお決まりの質問「プロフェッショナルとは」に答えた。吐き捨てられたようなインターネットの言葉に対して、「言葉が泣いているような気がします。本当はケアしてほしいのに」。“言葉の守り手”は憂う。
2006年にスタートした番組も今回で「File516」。さすがに扱う仕事もなくなってきたのか、昨今はプロモーションがらみの企画もちらほら。が、有名人の仕事ぶりならば、ほかでも見られる。私たちが見たいのはこういう「プロフェッショナル 仕事の流儀」だということを確信した。(桧山珠美)

そばにある「秘境」を覗いてみる

「不夜城はなぜ回る」
12月30日~1月30日放送/23:56~24:55/TBSテレビ

「秘境」は遠く離れた場所だけでなく、私たちのそばにも存在する。そんな“すぐそこにある秘境”を見せてくれる唯一無二のバラエティがこの番組だ。
夜中に光っている建物を「不夜城」と呼び、アポなしで直撃取材をする。すると思いもかけない人々の営みが明らかになる。古民家の模型作りに没頭する男性、タイ野菜の移動販売をするタイ出身の男性、カカシで「24時間ソフトボール大会」を開催する男性、ヤマメを養殖する男性や、めだかを養殖・飼育する男性、伝統の黒糖作りや茶せん作りに従事する男性、24時間対応の仏壇店、大晦日に終夜営業する銭湯など。
取材をするのは番組の企画・総合演出でもある大前プジョルジョ健太、通称「プジョルジョD」。入社前から不夜城巡りが趣味というからまさに筋金入りだ。
だからだろう、試食したりする際に相手にさりげなくカメラを渡して自分を撮ってもらったりしながら、まだ20代の若さなのにいつの間にか相手の懐に入り信頼関係を築いている。その鮮やかさには脱帽する。
そのうえで、不夜城の人々が秘かに抱く思いや悩み、さらに今の時代までが見えてくるところも魅力だ。
東京の男性は深夜にワカメの袋詰め作業をしている。それは、東日本大震災をきっかけに東北で始めたボランティアの花火大会を続ける資金作りのためだ。
秋田名産のいぶりがっこを作る老夫妻は、食品衛生法の改正で作業場の大幅な改装を迫られ、続けるかどうか悩んでいる。そこには同時に伝統地場産業が直面する高齢化という問題が浮かび上がる。
山形の草木染織作家の男性には後継者の息子がいる。息子は父親を尊敬しているが、世代の違いから両者は時に激しく対立する。その緊迫した場面の後、父親は「初めてだよ こんな取材は」と思わず漏らす。
このように、必ずしも「いい話」では終わらない。しかし、だからこそ一層リアルに感じられ、感動もより深まる。それまでVTRにツッコんで笑っていたのに気づけば真剣な表情になっているMCの東野幸治やゲストの姿は、私たちの姿そのものだ。(太田省一)

★「GALAC」2023年4月号掲載