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【正会員投稿】「とくダネ!」の震災報道を見て思う…22年の歴史に幕は残念

文=小関新人

 3月11日の「とくダネ!」の東日本大震災10年の報道を見た。小倉智昭キャスターが福島を訪れ、震災直後に取材した人々を再訪していた。また震災報道についての著書もある笠井信輔アナウンサーが宮城から生中継を行っていた。

 小倉キャスターのレポートは、復興の道筋すら見えない時の現場や被災者を自身が目の当たりにしていたからか、強い思い入れを感じさせる内容だった。被災直後の被災者を訪問した際の映像と、最近の被災者の映像を流し、またその変化を実際にわかっている小倉キャスターが自らの言葉で伝えたのは、非常に説得力ある作りになっていた。笠井アナが中継で、被災して死亡した子供の遺品について説明していたとき、ワイプから見られた、ほとばしる感情を押し殺したかのような小倉キャスターの表情からも、強い思い入れが垣間見られた気がした。

 災害報道はどうしても発生直後は派手な報道になるが、月日の経過とともに、人々の関心も薄れ、報道の機会も減っていく。しかし被災者の苦闘は長期にわたって継続するわけで、そういった人々の現状を伝えるには、定点観測的な手法は有効な手段の一つであろう。今回の「とくダネ!」の震災10年報道は、22年間続いた長寿番組ならではの強みを発揮したと思う。

 「とくダネ!」は26日の放送で22年間の歴史に幕を閉じるが、振り返れば、「とくダネ!」の特色は、時ににじみ出る小倉キャスターの強いこだわりや思い入れではないかと思う。「とくダネ!」の長い歴史の中で、小倉キャスターは、単に原稿を読むだけの存在ではなく、取り上げる出来事に一家言持っていたからこそ、独特の存在感を発揮し、「とくダネ!」らしさを作ってきたといえるのでなないか。単なるМCだったら、ここまで続かなかったのではないだろうか。

 そんな小倉キャスターの姿が、今月限りで見られなくなるというのはあまりに寂しい。時代の流れと言ってしまえばそれまでだが、世の中から一家言ある人が少なくなくなり、一家言あるキャスターもテレビから消えていく時代になるのだろうか。今のような時代こそ、言うべきことは言えるキャスターがテレビに必要ではないのかと思えてならない。そう考えると、「とくダネ!」の終了は本当に残念としか言いようがない。番組終了が間近に迫る中なか、今回の震災10年報道は「とくダネ!」の良さを十分に感じさせる好内容だった。