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【座談会】2021年冬ドラマを語る!

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第8弾★

新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言再発出のなか、1月新ドラマも順次スタート。
今回もマイベストTV賞プロジェクトメンバーが、注目の冬ドラマを語ります!

クドカン×長瀬智也の最強タッグ

T:1月も終わりになり、冬ドラマが出揃いました。注目作品を語っていきましょう。今季はTBS作品に注目が集まっています。
N:金曜ドラマ「俺の家の話」(TBS系)は宮藤官九郎の脚本で、この作品を最後に事務所をやめて裏方の仕事に就く長瀬智也が主演のドラマと聞いて、見ないわけがない。第1話ですでに、息子が父親を介護することの大変さと、その微妙な関係性が描かれていて涙してしまった。
Y:濃いキャストに圧倒されつつも、徐々にそれぞれのキャラクターの輪郭がはっきりしてきて面白みが増している。宮藤官九郎×長瀬智也のタッグで、今後も家族や介護がどう描かれていくのか注目したい作品。
S:シビアな題材がポップで明るいドラマになるのは、クドカン先生の筆力もさることながら、金子文紀さんの演出によるところが大きいと思う。褒めてくれない父親との葛藤、距離のある妹 弟、後妻業疑惑の介護士、別れた妻子の行く末、プロレスへの未練などなど、2話経過ですでにフックが渋滞しているが、どう転んでもおもしろくならないはずはない、と期待。
Y:関連過去作品の一挙放送と配信展開も行われ、アーカイブ活用例としても興味深いところだ。
I:火曜ドラマ「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」(TBS系)は「プラダを着た悪魔」っぽくもあるけれど、上白石萌音の「恋は続くよどこまでも」の二匹目のドジョウ狙いでもある。なんであれ楽しいのでオーケー。
T:「プラダを着た悪魔」ばりの菜々緒の鬼上司ぶりが何とも楽しい。メインの見どころは火曜ドラマならではの主人公“恋バナ”だが、サブの登場人物のキャラを楽しめるドラマでもある。
H:タイトルから韓国ドラマのリメイクを連想したが、オリジナル脚本。ただ、中身は皆さんがおっしゃるように、いろんな映画・ドラマから要素を取ってきたような話で、少ししんどい…。もちろんドラマのターゲットじゃないので致し方ないのですが…。そして、「恋つづ」を意識するなら佐藤健を継続しないと、世の女性からの「そっちじゃない!」という声が聞こえてきそう(笑)。
I:日曜劇場「天国と地獄~サイコな2人~」(TBS系)は、なんと言っても高橋一生の演技がすごい。男女の入れ替わりは、演技の巧拙がドラマの印象を大きく左右する。脚本は森下佳子だから、これからの展開も期待大。
H:確かに、初回放送後のSNSでも高橋一生の演技はトレンドになっていましたね。第2話ですでに周囲に入れ替わりが発覚してしまう展開は驚いたけど、この急展開でさらに関心が高まった。
I:今クール、なぜか「入れ替わり」ものが2本ある。魂が入れ替わる「天国と地獄」と、妻が入れ替わる「知ってるワイフ」(フジテレビ系)。昔からあるパターンで、実はあまり好きになれない設定だけれど、2本ともよくできている。

広瀬アリスや池脇千鶴らが新境地

T:では、「知ってるワイフ」はどうでしょう。こちらは完全なリメイクものです。
N:韓国ドラマのリメイクということで、第1話は若干、広瀬アリス演じる澪の感情表現が強めなのかと思ったところはあったけれど、第2話以降の書き方はすんなりと見られた。視点を変えると、他者のもっと深い一面が見えてくるというのは、良い物語だなと思えた。
I:純エンタメだけれど、妻がモンスター化したのが自分のせいだったと気づく夫は、ありがちな家庭の問題を分析していて、意図したのかどうかわからないが、実は社会派な面も感じられる。ちなみに広瀬アリスの演技がこれまでになく、いい。
S:設定は荒唐無稽だが、物語は日常の積み重ねを丁寧に描いていて、登場人物をああだこうだ言いながら見ている。夫はどっちつかずで許せん(怒)とか、妻はけなげだなとか、夫の同僚・津山はけっこう押しが強いなとか。それにしても、まだまだ現役の片平なぎさが認知症の母親役というのは軽く衝撃。
T:他のフジテレビ作品はどうでしょうか。
Y:オトナの土ドラ「その女、ジルバ」(フジテレビ系)は主演の池脇千鶴の気持ちの変化が表情や佇まいに如実に現れ、見応えがある。冒頭で提示されたコロナ禍の影響のほか、戦争孤児だった現ママとマスター、ブラジル移民の初代ママ・ジルバの生きてきた人生などの背景がどのように映像で描かれるかというところも含め、中盤以降の展開もとても楽しみ。
N:池脇千鶴演じる40歳の主人公が、第1話でよれよれの老婆に将来の自分の姿をみて、助けにいくシーンでもう引き込まれた。東京・渋谷のバス停でホームレス女性が殺された事件を知ったときの気持ちに近かった。池脇千鶴がメイクもなしでそのままをさらけだしている姿を見て、彼女をキャスティングしてくれてよかったと思える。
T:次にNHK作品はどうでしょう。
N:よるドラ「ここは今から倫理です。」(NHK)は、昨年のドラマ特区「ホームルーム」(毎日放送)で変態教師を演じていた山田裕貴が、今度は生徒に倫理を説く教師を演じているのが興味深い。ドラマのスタートから、ワンカットの長回しと思われる演出とスピード感に工夫があって見入ってしまった。内容も「倫理」や「正しさ」を、単に綺麗ごとではなく見せているところがよかった。
S:生徒が抱える心の闇を、対話によって解きほぐそうとする高校の倫理教師。言葉の力を信じて生徒と対峙する姿に、今の世にいちばん欠けているのは知性である、と諭されているような気がした。冷静でいながら、対話によって静かに熱を放つ教師を演じる山田裕貴がすばらしい。あの高校で倫理を選択したい。
T:学園ドラマだが、実は大人に見てもらいたいドラマ。先人の教えには、ストレスに満ちた昨今の状況を克服するヒントがある。倫理の授業に目を付けたのは斬新さを感じますね。

1クールに1本は欲しい「ほっこり」

Y:次にテレビ朝日。木曜ドラマ「にじいろカルテ」(テレビ朝日系)は、岡田惠和脚本の中、個性的な俳優陣が演じるそれぞれの登場人物にどのようなエピソードが用意され、印象的な場面や言葉が積み重なっていくかを期待している。
S:「ドクターX」や「BG 身辺警護人」と、毎クール強い男女が出てきていた木曜21時枠、今回は打って変わってほんわか風味。不治の病に侵された医師が村の診療所に住み込み、同僚や村人たちに心を寄せる。登場人物がみな優しい。でもそれゆえに傷つくこともある。鮮やかな色彩で描かれる里山の美しさと相まって、気持ちが落ち着くドラマ。
I:都会の日常感が入らない、ほっこり人情派。1クールに1本は欲しいテイストですよね。
Y:放送とあわせて各回のコミック版が配信サイトで提供され、番組終了後に出演者が連動型CMで紹介する方式にも、メディア展開の多様化を改めて感じます。
T:日本テレビのドラマはどうでしょうか。
H:「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(日本テレビ系)は、北川悦吏子の脚本、菅野美穂と浜辺美波が出演とくれば語らずにはいられません。ただ、期待が高かった分、少し物足りない。セリフも節々に古さを感じてしまったし、そこに日テレの軽い演出がまた…(苦笑)。今期もっとも注目していた作品だけに、残念でならない。
T:いつまでも少女のような母と恋愛には興味がないオタク娘。コメディとして楽しめばいいのだれど、たまに恋愛や人生に対する含蓄のあるセリフが入るので単純に笑うこともできない。そんな中にあって岡田健史演じる大学生の存在が異彩を放っている。陰の主人公として注目したい。
H:Huluと共同制作の「君と世界が終わる日に」(日本テレビ系)はゾンビもの。Huluではすでに全話が配信されていてスケールの大きさは今期随一。ただ、既視感のある設定や展開が続いていて、今後どこまでオリジナリティを出せるのかにかかっていると思う。個人的には、意外とあっさりゾンビ倒せるなぁと(笑)。今後はもう少し緊張感ある展開を期待したい。

土曜の夜の“異種二本立て”

T:こんなところでしょうか?その他個別に気になる作品があればお願いします。
S:「青のSP(スクールポリス)―学校内警察・嶋田隆平―」(フジテレビ系)は、その昔「3年B組金八先生」第2シリーズで、校内暴力に警察が介入、生徒が逮捕されるシーンを鮮烈に覚えている世代(アラフィフ)としては、中学校の職員室に制服警官が常駐しているだけで違和感ハンパないのですが、そこを越えるとコント並みにツッコミどころ満載で、結果、楽しく見ています。スクールポリスは揉めた生徒にすぐ手錠かけちゃうし、担任は思い込みと状況証拠だけで犯人特定しちゃうし、子どもの人権蹂躙しまくり。秩序ってなんだろう、とぼんやり思いながら、このドラマを真に受ける人が続出しないことを切に願っています。
T:オシドラサタデー「書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~」(テレビ朝日系)は原稿がなかなか書けない脚本家の物語。個人的には主人公の気持ちが手に取るように分かるが、ドラマ作りの裏側が描かれていて業界ドラマとしても十分楽しめる。周囲を取り巻く人物もキャラクターが立っていて面白い。
H:たしかに、「物語が降ってきた」とプロデューサーに提出したら「これは無いな」の一言で捨てられたり、人気俳優の一言で設定や物語がどんどん変更されたりするのも、業界あるあるとして楽しめる。
I:この時間帯、土曜ナイトドラマ「モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~」(テレビ朝日系)と「書けないッ!?」の二本立ては、全然テイストの違うものを1時間で2本見られるのって、結構いい。
H:「モコミ」は秀作だと思う。物の気持ちが読める特殊な能力を持った主人公が、周囲から理解されずに閉じこもっていた世界から一歩踏み出そうとするところから始まる。特殊能力はなくても、生きづらさを押しつけられた現代社会をうまく反映している。誰でも共感できる部分があると思う。小芝風花は「妖怪シェアハウス」に続いて作品に恵まれている。今年は彼女のさらなる飛躍の年になるかも。

テレ東に帰ってきた!

T:ドラマホリック!「ゲキカラドウ」(テレビ東京系)を見ていると、テレビ東京はこの手のグルメドラマを作らせたらピカイチと感じる。辛い料理が少し苦手な人でも、思わず食べたくなるようなシーンが満載。激辛料理を制することは、人生の辛さを克服するという設定もなかなか面白い。もう1本、ドラマパラビ「おじさまと猫」(テレビ東京系)は今クール一番推しのドラマ。妻に先立たれた中年男性とちょっとブサイクな猫との日常を描いたドラマだが、お互いを思いやる場面にはほろっとくる。ぬいぐるみの「猫」の仕草もかわいらしい。
S:「アノニマス~警視庁“指殺人”対策室」(テレビ東京系)は、香取慎吾が地上波連ドラに帰ってきたことが嬉しい。初回はSNSに広がる匿名の悪意を隠れみのにした殺意や、加害者は常に被害者にもなりうる怖さを硬質な映像で描いていてかっこよかった。ネットの闇と闘う刑事の物語を見守りたい。
H:ドラマ25「直ちゃんは小学三年生」(テレビ東京系)は、ただの悪ふざけかと思ったけど、見ているうちにどんどんハマっていきました。大人たちが真面目に小学生を演じる姿が愛しくて、郷愁にかられます。ひげ面の竹原ピストルがちゃんと小3に見えるからすごい! 子どものかわいさと残酷さが相まって、独特の世界観が楽しめます。
I:ドラマ24「バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~」(テレビ東京系)は、大杉漣さんを失ったものの、ますますパワーアップ。ただし「脇役じゃなくて主役でしょ」と突っ込みたくなる役者も出てくる。
Y:スタートがずれた朝ドラの「おちょやん」(NHK)についても一言。主人公・千代の心情が杉咲花の「目で語る」ような表現力で生き生きと映し出され、魅力を感じる。加えて、子ども時代を演じた毎田暖乃の演技が印象深く、「あの千代ちゃんの人生を見守りたい」という気持ちになるという、他の朝ドラでは感じたことのなかった面白さもあり継続視聴している。
S:「ミヤコが京都にやって来た!」(朝日放送テレビ)にも触れたい。tvkでも放送されているが、見逃し配信のTVerで関西ローカルの番組がずいぶん見られるようになったのはありがたい。ご時世で、好きな京都に旅行できないフラストレーションを、このドラマで発散しています。佐々木蔵之介が自転車で路地を駆けたり、京町家のちゃぶ台で朝食のパンをかじったり。京の風情に満ちていて、うっとりします。
H:医療ものが減って恋愛ものが増えたのも時代を反映していると思う。まだ落ち着かない状況の中で、ドラマの中の世界をコロナの無いパラレルワールドの世界として描くのか、制作陣も悩みどころですよね。全体を通して、そんな迷いも感じました。

以上(2021年1月29日開催)
※関東地区で放送された番組を取り上げています