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【座談会】2021年夏ドラマを語る!

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第12弾★

東京2020オリンピック・パラリンピックの開幕前に、
早々とスタートした夏ドラマ。
今年はどんなドラマが夏を盛り上げてくれるでしょうか?
マイベストTV賞プロジェクトメンバーが、注目の夏ドラマを語ります!

正義とは? 人生とは? 家族とは?

T:夏ドラマがスタート。オリパラの関係もあり、すでに第3話、第4話に入っているものもありますが、さっそく語っていきましょう。
S:「ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜」(日本テレビ系)は、今期いちばん気に入っています。永野芽郁がボケて、ムロツヨシもボケたところに戸田恵梨香がキメたら、三浦翔平が癒やして山田裕貴が諭す。ゆるい警察コメディと見せかけて、交番と地域住民とのかかわりや、性犯罪被害者に向き合う警官の心構えなど、根底にあるテーマもしっかりと描く。テンポの良い展開とイメージ通りの配役で、楽しく見ています。
N:あまり期待してなかったのですが、ツイッターの評判がすこぶる良くて見てみたら、性犯罪被害者にもきっちり寄り添っているし、女性の警官の先輩・後輩の関係性も良くて、安心して楽しめるドラマでしたね。
I:また警察もの?と思ったけれど、テイストが異質。コメディ的な要素が絶妙なバランスで盛り込まれていて、気持ちよく笑えるエンタメドラマ。
H:人気漫画が原作で、あの雰囲気をどう演出するのか期待と不安があったけれど、永野芽郁は良いキャスティングだったと思いますね。ストーリーに派手さがないぶん、いかにキャラクターの魅力を伝えていけるかが鍵。この後も楽しみですね。
S:それにしても山田裕貴、連ドラ3クール連続で警官役ですよね。
H:ノリに乗っている俳優ですからね。個人的に好きな、彼のデビュー作でもある戦隊シリーズ「ゴーカイジャー」が秋に復活するんですが、出演を引き受けてくれたのも嬉しい。彼には正義が似合うんですかね(笑)。
N:火曜ドラマ「プロミス・シンデレラ」(TBSテレビ系)は、同じく漫画原作のラブ・コメディ。ヒロイン(二階堂ふみ)は夫に浮気され、家も出て頼るところがなく、ひょんなことから出会った老舗旅館の息子で性格の悪い高校生(眞栄田郷敦)に拾われ、“リアル人生ゲーム”をするハメに!?というのがストーリー。「花より男子」の影響があるのだと思うけれど、男子高校生の性格が悪すぎて時おり引いてしまいます……。回を追うごとに、彼のいいところが見えるようになるとは思うので、期待しています。
Y:金曜ドラマ「#家族募集します」(TBSテレビ系)は、情にもろく、ちょっとお節介で気のいい人物を演じる仲野太賀が、前期の「コントが始まる」に続き、いい味を出している。序盤でさまざまな立場のキーパーソンが揃ってきたので、これからどのような「家族」が形成されていくのか楽しみ。
S:別々のシングル家庭がつながる「共助」を描こうとしているけれど、いまひとつぎこちない感じ。ひとり親の現実が単なる情報にとどまっていて、登場人物がリアルに動いておらず、ドラマの域に達していないように思いました……。
N:木曜劇場「推しの王子様」(フジテレビ系)は、最近多い、漫画原作もののようなオリジナルドラマで、「マイ・フェア・レディ」の逆で、女性が男性を育てる話になっています。
I:お金持ちが底辺にいる女性を“拾い上げ”て、上等な服を着せて……昔から映画やドラマで何度も見た設定だけれど、逆は珍しいのでは?
N:ただ反転させただけでは、ジェンダーの問題は描けないので、そういう部分がこれから意識を持って描かれているといいなと思います。

バットを振れ! マイクに向かえ!

T:水ドラ25「八月は夜のバッティングセンターで。」(テレビ東京系)は、何とも異色のドラマで、いかにもテレ東らしい切り口が面白い。毎回どんな女性のどんな悩みが描かれるのか楽しみ。また、夜のバッティングセンターの緑がかった映像が、味のある独自の世界観を作り出している。私の今期イチオシですね。
Y:バッティングから人の悩みがわかるという、元プロ野球選手役の仲村トオルの「謎の男」感が良い。
T:確かに「ライフ・イズ・ベースボール」の仲村トオルが、やけにカッコイイ。
Y:ドラマは野球を通して人生を見つめる内容で、各話の切り口がプレースタイルやゲーム内容に反映される工夫が面白い。各回のテーマに合わせた野球シーンのキーマンとして実在する「レジェンド選手」が出てくるので、ふだんはドラマを見ない野球ファンも楽しめそう。アプリゲームを原案にしていることからも、ドラマ制作のアイデアの広がりを感じられる。
S:バッティングセンターからいきなりグラウンドに舞台が移る展開に面喰らいますが、岡島秀樹や川崎宗則をはじめ選手本人のプレーに裏打ちされたセリフは、役者にはない説得力があり、野球に詳しくなくても何かを学んだ気になれます。その一方で、アルバイトで働く女子高生(関水渚)が野球に抱く葛藤も気になります。
Y:木ドラ24「お耳に合いましたら。」(テレビ東京系)も挙げたい。話すことが苦手な女性(伊藤万理華)が、ひょんなことから好きなチェンメシ(チェーン店の料理)の魅力を伝えるポッドキャストを始める。ラジオの世界をよく知るマンボウやしろの脚本で、制作する側とリスナーの両方の目線で音声メディアの魅力が描かれるのではないかと期待している。実在のラジオやポッドキャスト番組の情報が織り込まれていて、リスナー拡大のきっかけになるかも。こちらも実在の「ラジオレジェンド」が出てきて、作りが工夫されている。
S:ヒロインがポッドキャストの収録を始めると、舞台はスタジオに変わり、レジェンドDJが見守り励ます。これどこかで見たことあるぞと思ったら、「八月は~」と同じ手法だと気づきました。物語以前に、同じ手口が透けて見えたことにちょっと興ざめしてしまいました。

いい味…食べます、見せます、出します

T:その他はどうでしょうか。
S:ドラマ24「孤独のグルメ Season9」(テレビ東京系)は、10年近いシリーズながら、やっていることは相変わらずのひとり外食。コロナ禍で変わってしまった日常にあっても、井之頭五郎(松重豊)の豪快な食べっぷりは衰えず、見ていて爽快です。他人のオーダーをチラ見したり、隣席の夫婦の会話にうなずいたりする五郎さん。コロナ禍のささやかなコミュニケーションに共感します。
I:「シェフは名探偵」(テレビ東京系)は、華のあるフランス料理をほのぼのとしたストーリーで包む、ワンシチュエーションドラマ。レストラン以外でのエピソードはイラストのように見せる演出もいい。
T:ドラマ25「サ道2021」(テレビ東京系)が前回と違うのは、コロナ禍でのサウナの楽しみ方にも焦点を当てたところ。とはいっても、どんなユニークなサウナが紹介されるかがやはり最大の見どころ。今回もテレビを見ているだけで「整い」そう(笑)。
N:「彼女はキレイだった」(フジテレビ系)は韓国ドラマのリメイクのラブ・ストーリー。小学校のときの同級生が再会したら、幼いころ優等生の美少女だったヒロイン(小芝風花)は無職の残念女子に、冴えない太っちょ少年はイケメンエリート(中島健人)になっていたというもの。このドラマも、イケメンエリートのツンデレぶりがツンツンしすぎに見えてしまう。たぶん回を追うごとに、いいところが見えてくるのだと思いますが……。チェリまほ(「30歳になるまで童貞だと魔法使いになれるらしい」)の赤楚衛二がヒロインの同僚役で、いい味を出しています。
H:けっこう期待していたんですけどね……。「推しの王子様」もそうですが、男性目線だとどこにも感情移入できないんで、見続けるのはかなり辛い……。まあターゲットではないということなんでしょうが、もう少し脇役やサブストーリーに工夫があってもいいのかなあと。
T:ショートショート劇場「こころのフフフ」(WOWOW)は1話10分のショートドラマ。女子高校生(田牧そら)が出会う不思議な世界は、おじさんにはなかなか理解しがたいものがあるが、クスッと笑えるところもあり、見ていて癒やされる。杉野遥亮、白石加代子といった毎回登場するゲストもいい味を出している。
H:新しい朝ドラ、連続テレビ小説「おかえりモネ」(NHK総合ほか)にも触れたい。久しぶりに見続けられる朝ドラかなと思っています。震災の影響を描きつつ、主人公(清原果耶)の人生を通して前向きになれます。
Y:登場人物の他者への思いやりや、震災と向き合う気持ちの機微が丁寧に描かれていると思う。特に宮城・気仙沼の幼なじみ親子のエピソードがとても見応えがあった。ただ、東京編の始まりに当たって、気象予報士試験は一から始めて割とあっさり合格するもの?とか、バイト面接前の人を放送局のスタジオに突然同行させることができるの?とか、気になる点がいろいろある段階。引き続きどのような展開になるのか見ていきたい。
H:坂口健太郎演じる医師にも東京であっさり出会っちゃいますからね(笑)。気象予報士としてのスタートとなる東京編も、タイトルが「おかえりモネ」ですからある程度の予想はつくんですが、とにかく今は東京編が楽しみですね。
T:試練の夏ドラマという印象もありつつ、「ハコヅメ」やテレ東勢などの印象的な作品も出てきています。今後の展開に期待しましょう。

以上(2021年7月26日開催)
※関東地区で放送された番組を取り上げています