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【座談会】2022年冬ドラマまとめ編

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第17弾★

北京2022冬季オリンピック・パラリンピックが開催され、スポーツにも注目が集まった1~3月期。
マイベストTV賞プロジェクトメンバーが冬ドラマを総括します!

続編?映画化?…最大の謎?!

T:冬ドラマが最終回を迎えました。話題になった作品から総括していきましょう。
S:「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ)は、謎解きと叙情、ミステリーとヒューマニズムが共存する得難いテイストが貫かれていました。主人公の整(菅田将暉)をはじめ、風呂光刑事(伊藤沙莉)や妹の復讐に燃える我路(永山瑛太)といった周辺の登場人物も魅力的でした。
T:今期一番のドラマだったと思う。話の面白さもさることながら、美術、衣装、照明など映像の作り方が出色で、独自の世界観を作り出していた。演出力が光ったドラマだった。
N:最初は、しっかり一話で物語が解決するような作りだったのに、途中から、一話の中にいろんな話が切り替わって描かれるようになっていました。
I:だから回によって、余韻が全然違いましたね。伏線も多くてすごく面白かったけど、最終回はちょっと…続編あるのか。
S:モヤモヤした最終回は、明らかにシーズン2や映画化を見据えてますよね。
N:最終回も、じっくり一話を見せるというより、続編を匂わせる結末になっていたので、確かに続きが見たいとは思いましたが、しっかり終わらせるものは終わらせてほしいとも思いましたね。主人公の整のセリフは、考えさせられるものが多かったと思います。

悲劇の連続…でもハッピーに終始

H:個人的なナンバーワンは火曜ドラマ「ファイトソング」(TBSテレビ)。ストーリーだけ考えると悲劇の連続で、最終回に向かうにつれて主人公・花枝(清原果耶)の心情はキツくなる。でも、周りのキャラクターや主人公が明るく描かれていて、終始ハッピーに安心して見ることができた。時代に合わせた岡田惠和の脚本は見事だった。キャストの演技もそれに応えていました。
Y:生い立ち、事故、ケガ、病気と、主人公に降りかかる度重なる困難が当初は過剰にも思えましたが、清原果耶の芯のある演技が、自身の生き方や恋愛に真摯に向き合う人物像にマッチしていて物語に引き込まれました。
I:これまでにないタイプの主人公を清原果耶が好演してましたね。恋心を隠した菊池風磨や藤原さくらの切ない演技もうまくて魅せられていました。
Y:確かに幼なじみの2人が演者のフィット感も相まって魅力的で、スピンオフなども見てみたいと思うほどでした。

ホロッと、スカッと、モヤモヤと

N:金曜ドラマ「妻、小学生になる。」(TBSテレビ)は最初、小学生の女の子が大人の夫や娘にあれこれ世話する元妻を演じている感じがヤングケアラーっぽく見えて、ちょっとどうなるのかと思いながら見ていました。でも、子役の毎田暖乃の演技がそれを忘れさせるくらいうまくて、気にならなくなりました。最終回の着地点では、ひとつの体を共有していた元妻と小学生のふたりの人格を尊重する終わりになっていて、すごくよかったと思います。
I:コメディなのに、最終回で泣いてしまいました。大切な人と別れる日を少しも悔いなく過ごせれば幸せだろうけれど、そんな人は少ない。その尊さを豊かに描いていました。
S:木曜ドラマ「となりのチカラ」(テレビ朝日)は、初回から感じていたどことなく上滑りな印象は、最終回まで解消されませんでした。
T:人間模様の多彩さに遊川和彦らしさは見られたけど、主人公が最後まで魅力的に感じられませんでしたね…。
S:とはいえ見続けたのですが。チカラ(松本潤)が着地点のないまま勇気を振るってもなんとかなったのは、妻である灯(上戸彩)の機転が大きかったからではないかと。何をするにも家族を顧みないとね、というメッセージは伝わりました。
I:「おいハンサム!!」(東海テレビ)は、ホームドラマと言えばホームドラマなんだけれど、テイストが新しかったと思います。個性の強い3人娘と、飄々とした妻(MEGUMI)の味がなんともいえずよかったです。
S:ほめ言葉として受け取ってほしいのですが、ヘンなドラマでした。不倫、離婚、毒彼とそれぞれ悩める3姉妹の物語でしたが、中でも彼氏に支配されそうになる三女の美香(武田玲奈)が覚醒したのにはスカッとしました。一方で食をめぐるドラマでもあり、使いかけのネギを使い切ることに執着するな、という父(吉田鋼太郎)の教えは人生訓にもつながり、心に刺さりました。

陰に陽にリアリティ追求

T:そのほか、個別に感想があればお願いします。
H:「ゴシップ#彼女が知りたい本当の○○」(フジテレビ)は、視聴率は振るわなかったけれど個人的には評価しています。世の中に溢れたフェイクニュースや過剰な正義を盾にした誹謗中傷に対して、真実のみが立ち向かえることを伝えていた。俳優陣も良かったし、特に過去の暗い事件に影を落としながらも、凛々しく生きる主人公を黒木華が見事に演じ切っていました。
N:ドラマ24「シジュウカラ」(テレビ東京)は、主人公の女性漫画家(山口紗弥加)が年下の漫画家アシスタント(板垣李光人)と不倫するところから始まりました。そこで夫の、暴力をふるうわけではないけれど、モラハラ体質のようなものが見えてきました。最終回にむかって、この見えにくい夫の有害さが示されていて、フェミニズムの要素を感じられるドラマでした。
Y:放送前から注目が集まっていたよるドラ「恋せぬふたり」(NHK) は、他者に恋愛感情・性的感情を抱かない「アロマンティック・アセクシュアル」を取り上げ、人と人との多様な関係性を描いた興味深い作品でした。言葉の定義を基に物語を構成する難しさもあったのではと思いますが、当事者や専門家の考証を入れながら、全編にわたって丁寧に表現されていたと感じました。登場人物たちがそれぞれの目線から、自身と他者の感情の多様性について自分なりに考え段階的に受け入れていく様子が、リアリティをもって捉えられて見応えがありました。

「徹頭徹尾」も、「虻蜂取らず」も

I:ドラマプレミア23「ユーチューバーに娘はやらん!」(テレビ東京)は、どちらの男性を選ぶのか、と見ていたのに、結末は意外と言えば意外、納得と言えば納得。イケメンじゃない彼に収まったことに溜飲を下げた人がいるかもと思いました。
T:ドラマ25「鉄オタ道子、2万キロ」(テレビ東京)は、ドラマらしいことはほとんど起きないけれど、風景を見せることに徹した演出は潔かった。ドローンを活かした映像は、ダイナミックで本当に素晴らしかった。
H:あの時間帯にあの映像が流れると、なんだか落ち着きましたね(笑)。正直、毎回は視聴できなかったですけど、それでもなぜか心に残る作品でした。
S:水曜ドラマ「ムチャブリ! わたしが社長になるなんて」(日本テレビ)は、ヒラ社員が突然社長になり、ライバル会社からの容赦ない横ヤリ、上司と部下との三角関係…。どこかで見たようなシチュエーション満載でしたが、それでも見続けられたのは、高畑充希の魅力ゆえだと思いました。こざかしいセリフ回しが役柄を伝え、ころころ変わる豊かな表情が、ありきたりな物語に彩りを添えていました。
H:木ドラ24「真夜中にハロー!」(テレビ東京)も挙げたいです。毎回、人生に迷った登場人物が扉を開けるとそこにはハロープロジェクトのアイドルグループが! ファンならずとも、キラキラと歌って踊る姿にグッと来てしまった(笑)。自分にとっての応援歌は人それぞれあると思うけれど、それをドラマとしてうまく成立させていました。
T:今期一番楽しみにしていた「ケイ×ヤク -あぶない相棒-」(読売テレビ)は、期待はずれに終わってしまいました。刑事とヤクザという新しいバディものが見られると思っていたのに、BLをにおわせた演出は完全に空回り。ハードボイルド感も途中で失せてしまいました。
H:新ドラマ枠の「ドクターホワイト」(関西テレビ)も結局離脱してしまったけれど、医療ドラマとしてもミステリーとしても中途半端に感じてしまい残念でした。
T: 4月に入り春ドラマもスタート間近。引き続き、チェックしていきましょう。

(2022年4月1日開催)
※関東地区で放送された番組を取り上げています