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【座談会】2023年秋ドラマを語る!

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第30弾★
ギャラクシー賞マイベストTV賞プロジェクトメンバーが、2023年秋ドラマ注目作の感想を語ります!

回を重ねて期待感
齢を重ねて現実味

T:秋ドラマがスタートしました。さっそく注目作品を語っていきましょう。まずは新たに始まった朝ドラからいかがでしょうか。
K:連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK)は、これほどまで子役から主役へのチェンジがスムーズだった朝ドラも珍しいのでは。鈴子役の二人(澤井梨丘、趣里)は本当に似ていますね。両親やアホのおっちゃんなど、鈴子をとりまくキャストがそれぞれ魅力的だし、音楽も楽しくて、今のところ言うことなしです。毎朝ウキウキワクワク、この先のズキズキも含めて伴走したいです。
Y:3週目では、本編のモデルとなったOSK日本歌劇団の翼和希の存在感と、蒼井優の静かな迫力が目を惹きます。趣里が演じる主人公の転んでもただでは起きない前向きな元気さには好感が持てて、今後の展開が楽しみです。
K:日曜劇場「下剋上球児」(TBS)は、野球部監督を引き受けた高校教師(鈴木亮平)が、高校球児だった過去をひた隠しにしたり、当初は監督就任依頼を頑なに固辞したりと、単なる熱血スポーツものではなさそうな設定が面白いです。野球部の成長だけでなく、先生の人生にも深い物語がありそうで期待が持てます。
S:弱小野球部が甲子園を目指す。1週間が始まる直前の日曜夜にうってつけの、気分が上がるお話です。小日向文世さんが久しぶりに変なおじさんの役どころで出ているのがツボです。
T:日曜劇場は俳優ではない人を起用しているのも見もの。今回は元プロ野球選手の鳥谷敬や歌手の新浜レオンに注目したいです。
K:ドラマ24「きのう何食べた? season2」(テレビ東京)。人気ドラマの続編が始まりました! シロさん(西島秀俊)とケンジ(内野聖陽)が前作からちゃんと年齢を重ねていて、体型やら健康状態やら年相応の心配ごとが増えているのがリアルです。二人の関係性がこの先どう深まっていくのか、シロさんの手料理とともに楽しみたいです。
T:たしかに、主人公の二人がアラフィフになり、健康に気を遣った料理が登場するのが新たな見どころかも。さらに“オネエパワー”を増した内野聖陽の演技もとても楽しいです。

チープ、重厚、正統派
「二人」をめぐる物語

Y:火ドラ☆イレブン「時をかけるな、恋人たち」(関西テレビ)は、劇作家による脚本で、主演の二人(吉岡里帆、永山瑛太)を中心とした舞台のような掛け合いが面白いです。ちょっとレトロな未来感(?)のセットや衣装、オープニングアニメーションなどもかわいらしく、見たことあるようで見たことないドラマ、という感じの楽しさがあります。タイムパトロールにまつわる物語の行方も気になります。
T:未来の世界を、あえてチープに描いているところが笑えます。しかも、ちゃんと恋愛も絡めていて。まさに新感覚の「恋愛SFコメディ」です。
K:木曜ドラマ「ゆりあ先生の赤い糸」(テレビ朝日)は、夫が突然倒れて、意識不明に。まだ第1話なのに、驚愕の事実がボロボロ出てくるわ、周りはジコチュー(自己中心的)ばかりで頼りにならず、崖っぷち妻の孤軍奮闘の介護が始まる…と聞くとずっしり重たそうなのですが、引き込まれます。菅野美穂演じる妻の芯の強さ、地に足をつけ現実を切り開くキャラに好感が持て、応援したくなります。人生何か起きる時は突然で、巻き込まれるのはいつも妻なのよね、という主婦層の共感も呼びそうです。
T:登場人物が感情を爆発させて、本音で言い合いをしているところが面白いです。奇妙な関係がどのように展開していくのか、とても楽しみです。
I:「いちばんすきな花」(フジテレビ)は、多部未華子、松下洸平、今田美桜、神尾楓珠がクアトロ主演。初回は「二人」という言葉をキーワードにそれぞれの不器用な人柄と生い立ちが紹介されましたが、脚本が秀逸だと感じました。少し理屈っぽく人の心の痛いところを突いてくる感じが、ちょっと山田太一を彷彿とさせます。男女二人ずつですが、テーマになっている「男女の間に友情は成立するのか?」が果たしてどうなるのか、展開が楽しみです。
H:昨年秋の「silent」(フジテレビ)チームの再集結ということで、期待値が高すぎた感はあるんですよね。個人的には少し物足りなかった。会話劇としてはすごくいいんだけれど、4人が集まるシーンとか、ちょっと都合よすぎないか?とか、細かいことが気になってしまいました。「男女の友情」という何回もこすられたテーマということもあり、1~2話見た段階だと評価が難しいですね。ここから、どんなふうに現代版にアップグレードしてくれるのか楽しみではあるんですが…。

たそがれを味わう
成長ぶりを楽しむ

T:ほかに個別の注目作があればお願いします。
S:土曜ドラマ9「たそがれ優作」(テレビ東京)は、なんとなく見たのですが、タイトル通りのたそがれ感、ものさびしさが物語全体を覆っていて、独特の雰囲気を漂わせています。ようやく日の目を見た中年俳優と別れた元妻、息子との微妙な関係がゆったりと紡がれていて、土曜夜のエアポケットな時間にふさわしいドラマだと思います。
Y:「パリピ孔明」(フジテレビ)は、諸葛孔明が渋谷に降り立つという原作マンガの設定自体が面白いのですが、実写版は絶妙なハマり役のキャストに加え、衣装などの細部にこだわった表現、そして何より肝となる音楽が、こだわりを持ってオリジナルで作られているところに見応えがあります。初回の女王蜂アヴちゃんに始まり、ミュージシャンが多数出演して物語を彩っており、次は誰が出てくるかという楽しみもあります。
T:ドラマチューズ!「日常の絶景」(テレビ東京)は、全3回の放送をすでに終了していますが、ぜひ紹介したい。タイトル通り、身近にある普通の風景でも感動してしまう映像が絶妙。巨大なクレーンやダムでさえも、ドラマ仕立てで紹介されると愛おしく見えてしまいます。「U-NEXT」などの動画配信サイトでぜひチェックしてみてほしいです。
I:夜ドラ「ミワさんなりすます」(NHK)は、うだつの上がらない映画オタク(松本穂香)が、ひょんなことからミタさんならぬミワさんを名乗り、家政婦として映画俳優(堤真一)の邸宅で働き始めます。素性がバレるのは必至の状況ですが、それで追い出されるとも思えず…。飄々としてとぼけた松本の演技が魅力的です。
S:火曜ドラマ「マイ・セカンド・アオハル」(TBS)は、貧乏一家に生まれたことへの諦めから一転、非正規社員から大学生に。キャンパスライフに飛び込んだ30代女性を広瀬アリスが表情豊かに演じています。人生に悔いを残さないよう、学び直しに真摯に取り組む姿がいいと思います。ただただ恋愛コメディな展開にはなりませんように。
H:同じTBSだと、金曜ドラマ「フェルマーの料理」(TBS)は、数学に挫折した高校生が料理の才能を開花させていく物語。第1話は高校生から料理の世界へ飛び込むまでを描いていましたが、オープニングでは成長した姿が描かれていた。高校生のあどけない雰囲気からガラッと変わって誰も寄せ付けない大人になっていて、その変化の過程を楽しみに見ていきたいです。

芝居巧者ぞろい…これからだ
ミニドラマ形式…これもあり

T:私はBSから、木曜ドラマ23「天狗の台所」(BS-TBS)を挙げたい。天狗の末裔という現代の若者が主人公。自然の恵みを生かし、手間をかけて作る料理が何ともおいしそう。弟役の越山敬達の初々しい演技が、田舎の風景と相まって、心を洗われます。
S:水曜ドラマ「コタツのない家」(日本テレビ)は、キャリアウーマンの万里江(小池栄子)が対決するのは揺れるお年頃な高校生の息子、ほぼ無職の夫、無気力な父。1対3のバトルが続く初回に軽く辟易します。不仲とはいえ、夫と妻の空気感が違いすぎる。そもそもこんな二人が一緒に生活できるものかしら、なんて要らぬ疑問を抱いてしまいました。ただ、芝居巧者を取り揃えたキャストですから、これからおもしろくなると期待しています。
Y:「月とケーキ」(フジテレビ)は、6分枠(実質3分ほど)のミニドラマで、再婚夫婦役の市川実日子と井浦新の醸し出す独特の空気感が魅力的です。ミニ番組イコール情報番組といったイメージがありましたが、短尺かつ続編形式のドラマもいいな、と思ったところです。
T:最後に、ドラマストリーム「君には届かない。」(TBS)に触れたい。今クールは「君には届かない。」「きのう何食べた?」のほか、「君となら恋をしてみても」「ワンルームエンジェル」(ともに毎日放送)と4本のBLドラマが。まさにボーイズラブが一つのジャンルになっていますね。そのなかでも「君には届かない。」は、幼なじみの同級生が恋仲になっていくという王道のBLドラマ。お互いの気持ちが分からなくて、素直になれないふたりの言動が、もどかしく、そしてとても愛おしいです。主人公二人のイケメンぶりにも注目です。
こんなところでしょうか。これからの展開に期待が膨らむ作品が多いですね。年末の終了時にまた座談会を行いましょう。

(2023年10月20日開催)
※関東地区で放送された番組を取り上げています