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【座談会】2023年冬ドラマまとめ編

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第25弾★
ギャラクシー賞マイベストTV賞プロジェクトメンバーが、2023年冬ドラマ注目作の感想を語ります!

今期も豊作だったNHKドラマ
続編も楽しみな「大奥」に満足感

T:冬ドラマの放送が終了しました。今回も総括していきましょう。まずは半年の放送を終えた朝ドラ、連続テレビ小説「舞いあがれ!」(NHK)からいきましょう。
K:おとなしそうに見えたヒロインが、次々新しいことにチャレンジするRPGのような展開に、やや消化不良ぎみになった後半。最後は彼女の夢と挫折、努力が、大阪万博や「空飛ぶ車」というリアルな近未来に繋がっていって、なるほど着地点から逆算したストーリーだったんだなと、ある意味納得。ばんば(高畑淳子)、詩人のおっちゃん(又吉直樹)など、主人公たちの心に影響を与える人物像が印象に残りました。
Y:永作博美と高畑淳子の名演が特に楽しみで見続けました。主人公はジェット機のパイロットになるのだろうという当初の予想に反した展開になりましたが、人生の転機を各々がどう生きていくのか、経験の積み重ねがどう人生を彩っていくのか、という多様な側面が描かれたのだな、というのが全編を見ての感想です。とはいえ細かいエピソードが満載になり、特に最後の2週間はもっとゆっくり見たかった、というのも本音です…。
T:良いドラマは、良い脚本ありき、というのを再認識したドラマでした。と同時に、3人の脚本家を使いこなせなかったプロデューサーの責任も大。永作博美や高畑淳子など、俳優陣はいい味を出していましたが。
H:皆さんと同じ意見ですね。永作さん高畑さんがいなかったら成立していなかったと思います。朝ドラはヒロインを愛せるか、が全てだと思っているのですが、今回のヒロインは町工場編になってからはちょっと…。パイロット目指す編は面白かっただけに残念でしたね。
I:NHKは朝ドラもさることながら、夜ドラも見応えがありました。「ワタシってサバサバしてるから」(NHK)主演の丸山礼は強烈で、「彼女を好きになるまで、あと○日」という毎回の引っ張り方も上手かった。「超人間要塞ヒロシ戦記」(NHK)も「いったいどうなるの?」と最後まで目を離せませんでした。
N:NHKだとドラマ10「大奥」(NHK)を挙げたい。原作に濃いテーマがあって、テレビドラマ化する際に、それが弱められて誰にでもわかる当たり障りのないものになってしまうということはあると思いますが、このドラマ化では、原作にあるテーマをより強く感じられる作りになっていると思いました。特に「五代将軍綱吉・右衛門佐編」では、家を継ぐために、子を産むことを強いられ、自分のものではなく、コントロールされているということはおかしなことではないか?というテーマが明確に書かれていて、現代社会にも通じる部分を感じました。
H:重厚なストーリーはとても見応えがありましたね。今、改めて実写映像化することの意味を痛烈に感じて、個人的には今期一番良かったです。あとはキャスティングの妙。徳川吉宗役に冨永愛を起用したのは最高でしたし、他の将軍役の堀田真由、仲里依紗も見事でした。続編が秋公開なので、そちらも楽しみです。
T:プレミアムドラマ「我らがパラダイス」(NHK)は、介護ドラマはシリアスになりがちですが、「介護を頑張っている女性」の溜飲を下げる結末になって安堵。介護格差、介護に非協力的な家族の存在、施設入居者同士の恋愛など、高齢社会のトピックスがちりばめられていて、なかなか見応えがありました。

バカリズム脚本に賛美
タイパに対抗した作品も

T:民放の作品はどうでしょうか。
K:「ブラッシュアップライフ」(日本テレビ)は「人生〇週目?」という会話を何人もと交わしました。今クール一番の話題作でしたね。後半、生き直している人たちと出会ってから、ますます目が離せなくなりました。人間に転生したくて徳を積んでいた主人公が、生きる目的が純粋な利他に変わっていく展開に、グッと心を掴まれました。友情と地元愛というテーマが一貫してブレず、余計な恋愛要素などが盛り込まれなかったのも、複雑になりすぎず良かった。バカリズム本人が演じた死後案内人は、クールで事務的でえもいわれぬ雰囲気。才能溢れるバカリズム・ワールドを堪能させていただきました。
N:バカリズム脚本作の「架空OL日記」もおおいに楽しませてもらいましたが、「架空」の出演者が、このドラマに要所要所で出演しているのも楽しみでした。女性たちの会話に、幻想みたいなものが一切入ってこないのもすごかったし、最後の方の展開でハラハラドキドキさせておきながら、最終的にはやっぱり主人公たちのなんでもない日常と他愛ないおしゃべりがずっと続くところもぐっときました。
I:バカリズムの脚本は、ますますブラッシュアップされた感があります。
Y:音楽(挿入歌)の使い方も効果的でした。時代を象徴するようなヒット曲、歌詞がストーリーとリンクするような曲の数々が散りばめられ、物語の背景に深みを増していました。音楽がサブスクで聴きやすくなった時代に、過去の作品をドラマに活かすことは、楽曲の再発見や聴取層の広がりにもつながりそうです。
T:同じ日テレ系でも、「しょうもない僕らの恋愛論」(読売テレビ)が個人的には今期、一番共感できたドラマです。若い世代の台頭で仕事面で焦りを覚えたり、若い頃を懐かしく思いノスタルジーに浸ってみたり、うまく恋愛ができなくなってきたり。そんなミドルエイジ世代の姿が絶妙に描かれていたと思います。
S:「相棒 Season21」(テレビ朝日)は初代相棒・亀山薫(寺脇康文)が復帰。毎回の物語も過去の名物キャラクターが頻繁に出てきて、まさに「相棒アベンジャーズ」の様相を呈しています。一貫して社会のひずみを捜査してきた特命係の最大の敵は、旧態依然にあぐらをかく人たちなのかな、と思いました。
T:木曜ドラマ「警視庁アウトサイダー」(テレビ朝日)は薄っぺらなコミカル刑事ドラマかと思いきや、登場人物にダークな面もあり、描写の軽さと重さに絶妙なバランスが取れていたドラマでした。バディ感もいい味を出していて、新しいタイプの刑事ドラマとしておおいに楽しめました。続編にも期待したいです。
I:私も回数を重ねるにつれて引き込まれました。ただ、コミカルな部分は最後までいただけなかった。ダークでシリアスなところを緩和しようとしたのでしょうが、奏効したとは思えませんでした。
K:「星降る夜に」(テレビ朝日)がありきたりな年下男性との恋愛ドラマにならなかったのは、北村匠海の演技力と存在感が大きかったと思います。純粋に自分の想いを、熱く手話で伝えようとする姿が魅力的。「饒舌」な手話に好感が持て、視聴者も自然に手話を覚えたのでは。「silent」は中途失聴者の苦しみが描かれていましたが、本作はろう者であることがメインテーマではなく、ひとつの個性として描かれているのが新鮮でした。
Y:土曜ナイトドラマ「6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』(テレビ朝日)は会話劇のテンポと独特の間や余白を楽しめる、週末夜の30分にちょうど良いドラマでした。主演の高橋一生がインタビューで「“タイパ”に抵抗する作品」という趣旨の発言をしていたのが印象的でした。倍速再生や飛ばされることを見越した構成とは真逆に、ゆったりとした時間の流れのなかでしっかりと人物が描かれていたと思います。このような手法のドラマが作られ続けることの意義があるのではと再認識しました。
T:フジテレビ系列の作品はいかがでしょうか?
K:「罠の戦争」(関西テレビ)はカンテレの政界ドラマ、「エルピス」に続き今回も骨太な作品でした。6年ぶりの草彅剛の主演、予測できないストーリーに引き込まれて見ていましたが、権力に立ち向かう主人公が、いつしか権力に取り込まれてしまう展開は苦しかった。対照的に、彼を支える女性たち、妻(井川遥)、秘書(小野花梨)、記者(宮澤エマ)の、しなやかさ、強さが際立っていました。妻との関係が逆転するエンディングに驚かされ、最後まで見て良かった!と満足しました。
S:「女神[テミス]の教室~リーガル青春白書~」(フジテレビ)を見始めたときは真面目さと誠実さがドラマになるのか、と思っていましたが、意外にそこが引力になっていました。最終回で、受かった後も厳しい生徒たちの生活を描く一方、それでも法科大学院の存在意義を訴える展開は、説得力がありました。
I:真面目さと誠実さ。まさにそれを北川景子が好演していました。真っ直ぐなドラマで、こちらも素直に好感を持ちました。

多様な作品で充実した冬ドラマ
春ドラマも期待でいっぱい

T:その他、個別にあればお願いします。
S:ドラマ24「今夜すきやきだよ」(テレビ東京)の主人公のあいこ(蓮佛美沙子)は仕事もできて恋愛体質だけれど家事は苦手、一方、ともこ(トリンドル玲奈)は絵本作家の仕事は煮詰まっているけれど料理が大好き。お互いの足りない部分を補いあって共同生活をしていたけれど、あいこが結婚、出産することになって…というところでどうなるかと思いましたが、それぞれのライフステージが変わっても、お互いを頼りながら生きていくことを示していました。伝統的家族観ではなく、自分でどう共同体を作っていくのかを考えている途中を描いているドラマなのかなと思いました。
T:ドラマシャワー「飴色パラドックス」(毎日放送)の衝突しながらも惹かれ合っていくという物語はBLドラマの王道で、期待通りの展開になっていたものの、演技が物語に追いついていかない印象が…。自主映画時代から注目している古厩智之の監督作品だけに期待が大きかっただけに、今回は古厩マジックは不発のようでした。
I:「リバーサルオーケストラ」(日本テレビ)は誰でも聴いたことがある有名なクラシックを使っていて楽しめました。坂東龍汰のフルートなど、素人とは思えない演技も見られました。
H:若干既視感があったり、展開に「?」が浮かんだりもしましたが、突き進むパワーのある作品だったと思いますね。個人的には好きでした。
T:注目を集めた「ブラッシュアップライフ」が中心の冬ドラマでしたね。春ドラマももうスタートしています。引き続き、ウォッチしていきましょう。

(2023年3月31日開催)
※関東地区で放送された番組を取り上げています