オリジナルコンテンツ

【座談会】2024年春ドラマを語る!

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第34弾★
ギャラクシー賞マイベストTV賞プロジェクトメンバーが、2024年春の注目ドラマを紹介します!

2024春ドラマスタート
心を鷲掴みにする朝ドラ「虎に翼」

T:2024年春ドラマがスタートしています。新生活がスタートした人も多いと思いますが、この座談会にも新しいメンバーが加わりました。新たな視点も加えて、引き続き注目作品を中心に語っていきましょう。新しく始まった朝ドラからいかがでしょうか。
Y:連続テレビ小説「虎に翼」(NHK)は真っ直ぐ人生を切り開いていく主人公に伊藤沙莉がぴったり。女性を取り巻く違和感や課題を的確に捉えた表現に毎回心を動かされます。前作の「ブギウギ」も面白く、全編完走しましたが、今回さらに毎日の視聴が楽しみです。通行人や客など背景にいる人々、特にさまざまな女性がそれぞれ思いを抱えて日々を生きていることが画面から伝わってくるような表現も見応えがあります。
M:最高すぎです。すでに心を鷲掴みにされています。初回冒頭の憲法14条「法の下の平等」の朗読から始まり、「結婚って罠」「教えてもらった?教えてもらってないよね」「女辞める」「私たちはいつの時代もこんなふうに都合よく使われることがある」などなど、気迫溢れるイシューを投げ込んできます。寅子が感じた理不尽が今も続いていることに気づかされ、女性一代記という朝ドラを突き抜け、現代の私たちにも“黙るな、怒れ、立ち上がれ”と訴えているよう。そして、戦う女、戦わない・戦えない女に、甘味を食べながらおしゃべりして、痛みを分かち合い、対話による連帯を描く。生理を朝ドラで描いたのも新鮮です。
T:見合い結婚を拒んで弁護士を目指すなど、女性の成長を描いているのはこれまでの他の朝ドラと同じですが、今回は女性差別の問題を真っ向から扱い、それが物語に違和感なく溶け込んでいるあたりが今日的だと言えます。「法は弱い人を守るもの」という主人公の台詞に代表されるように、弱者へのエールが込められている点も好感が持てます。
M:脚本は吉田恵里香で納得です。主演の伊藤沙莉はもとより、尾野真千子の研ぎ澄まされたナレーションも素晴らしい。わずか3週でこの凄み。どこまでの高みに連れてってくれるのか楽しみです(パワーアップした「逃げ恥」のみくりと百合ちゃんに再会できた気分もうっすらします)。

主人公の人物像と人生に注目
“記憶”を巡り個性発揮

N:日曜劇場「アンチヒーロー」(TBS)は内容にも期待していますが、毎回、多彩な俳優が登場するのも楽しみです。俳優たちにスポットをあてた記事や予告編など、広報の発表もしていて、スタッフたちが、新たな俳優をフックアップしようとしている意志が感じられていいなと思いました。
H:番宣で登場するはずの朝の情報番組に長谷川博己が遅刻したのは笑いました(笑)。第1話は殺人事件の容疑者の弁護。証言の信ぴょう性を裁判で崩していく展開はスピード感もあって面白かったです。裁判ドラマって善悪の対立構造とは別のベクトルでの対立も描けるのでドラマ的展開は作りやすい。ただ一方で、視聴者を納得させるだけの説得力が脚本にも俳優陣の演技にも求められる。1話だけでそれを判断するのは時期尚早かもしれませんが、個人的には見続けたいなとは思いましたね。
T:タイトルとは違って情けのある姿も垣間見られて、応援したくなる主人公だと感じました。どのように無罪を勝ち取っていくのかという物語も楽しみですが、今後、主人公の人物像がどのように明かされていくかも興味津々です。
K:ドラマプレミア23「95」(テレビ東京)は特定の時代を舞台にしたリアルさのなか、髙橋海人ら高校生たちがどう人生と向き合っていくのか展開が楽しみです。演出の絶妙なレトロ感も相まって、日本中が震撼したあの時期の自分自身の感情も想起されます。出演者では、大河ドラマ・恋愛ドラマからの、今回は不敵なカリスマを演じる中川大志の演技の振り幅に感心しています。
N:初回を見たとき、1995年の頃の風景のなつかしさと、高校生たちの青春を描いたという部分で、日本でもリメイクされた韓国映画『SUNNY』の男子高校生版みたいだなと思いました。最後にかかるエンディングテーマも、95年ころを思い出す、当時のHIP HOPみたいなのも合っていてよかったです。
Y:「アンメット ある脳外科医の日記」(関西テレビ)は事故の影響で1日しか記憶が持たない脳外科医を杉咲花が好演しています。1話目を見て、医者と患者、周囲の人々の感情や関係性が丁寧に描かれていると思いました。「今日を生きる」ことを改めて捉え直すような内容になりそうで、物語の展開に注目しています。
H:個人的に一番注目していた作品です。記憶障害を巡り「医療に携われない医師」という新しい基軸のドラマ。まだまだ主人公の過去や周囲との関係性は分かりませんが、今後の展開が気になります。主演の杉咲花は円熟期を迎えつつあり、思う存分演じ切ってほしいですね。ノーメイク?なのか、1話放送後に“そばかす”に注目が集まったのは想定外だったと思います(笑)。
N:火曜ドラマ「くるり〜誰が私と恋をした?〜」(TBS)は記憶喪失になったヒロインが、記憶がなくなる前に誰と恋をしていたか、という物語だと聞くと、あまり関心が持てない話かもしれないなと思っていたのですが、一話を見てみると、会社の派遣社員の女性が、時給が出るからと残業を押し付けられたりと割を食っている現状を描いていたり、そんな状況にヒロイン(生見愛瑠)が異を唱えるところまで描いていて、普段は忘れられがちな会社の中の存在にも光を当てていて、次回以降も見ようと思えました。
H:この作品も記憶喪失を巡る物語。ただ、火曜10時枠ということもあって、明るいストーリーですよね。以前の自分を覚えていないことをポジティブに捉えて、今の自分がやりたいことを進めていく展開は時代にも合っているような気がします。生見愛瑠は満を持してのGP帯初主演。個人的には暗い役をやっている方が合っていると思いますが、今回の作品でも期待しています。

多種多様な作品出揃う
今後の展開に期待!

T:他に気になった作品があれば個別にお願いします。
B:ドラマストリーム「からかい上手の高木さん」(TBS)は監督に今泉力哉、製作にはNetflixが協力していることもあり、通常の地上波ドラマとは異なる映画のようなクオリティです。原作漫画もアニメも、キャラクターの魅力によって人気であるがゆえに、実写化は厳しいのでは?という不安もありましたが、主演の2人のピュアな演技や舞台となる小豆島の風景、そして今泉監督の画作りが素晴らしく、原作の魅力を新たなる形で引き出していると思います。西片役の黒川想矢は、映画『怪物』での難役の演技が評価されていますが、今作の年相応のコミカルで可愛い演技も上手なので驚きました。いろいろな引き出しがある役者なので、今後の活躍にも期待です。劇場版の公開も控えていて、劇場版を盛り上げるために連続ドラマが活用されているというビジネス面も面白いですね。
T:ドラマ25「季節のない街」(テレビ東京)は宮藤官九郎が企画・監督・脚本を務めていて、多彩なキャラクター、コミカルな展開、クセの強い役者などクドカンワールドが満載。12年前に起きた“ナニ”と呼ばれる大災害は朝ドラ「あまちゃん」を連想させますが、傷を負っているさまざまな人たちが今後どう描かれていくかが楽しみです。
K:「Destiny」(テレビ朝日)は法学部学生の青春群像劇かと思いきや、初回から衝撃的な展開で目が離せなくなりました。産休を経て久しぶりのドラマ主演の石原さとみが、繊細かつ凛とした存在感で光りを放っています。不幸な過去、友情、情愛が絡み合い、サスペンスタッチでどこへ連れて行かれるのか予測不能。吉田紀子の脚本がきめ細やかに人物を描き出し、物語に引き込まれます。
H:重厚感ある物語で注目はしていますが、第1話に関しては構成次第でもう少しうまくできたのかなぁという感じがしています。話題にもなっていましたが、やっぱり大学生時代をあそこまで1話から描かれてしまうと、その違和感が最後まで残ってしまって本筋の物語に没入できなかったですね……。
K:「イップス」(フジテレビ)はバカリズムと篠原涼子のバディにワクワク。ミステリー作家と捜査一課のエリート刑事、ともにスランプ、という人間味溢れる設定が面白いです。ひねりのある濃いキャラの2人が繰り広げる、弾丸トークの会話劇が見事。コメディ&ミステリー両方の要素に加え、毎回のゲストも豪華で楽しみです。
T:毎日放送の「ドラマシャワー」枠がなくなってしまったのは残念ですが、他局でもBLドラマは健在。「パーフェクトプロポーズ」(フジテレビ)は、同居を開始した幼なじみの男性ふたりが、次第に心を通わせていく様子が丁寧に描かれていて好感が持てます。野村康太演じる、ちょっと生意気な青年のツンデレぶりも見ものです。
H:「366日」(フジテレビ)はHYの『366日』から着想を得たラブストーリー。久しぶりに“ザ・月9”感があって良いのではないでしょうか。第1話ではすれ違いを続けていた2人が想いを伝えあい、ここからというときに悲劇が……という王道展開。今からどういった決着をつけるのか楽しみです。あと、2話の戸田菜穂の演技が見事でした。悲劇に遭ってしまった息子を想う中での緊張感、悲壮感、疲労感がひしひしと伝わってきました。
T:原作物、オリジナルと多種多様な作品が揃ったクールだと思います。木村拓哉主演の「Believe-君にかける橋」、山下智久主演の「ブルーモーメント」などまだスタートしていないドラマもありますが、引き続きチェックしていきましょう。

(2024年4月19日開催)
※関東地区で放送された番組を主に取り上げています