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【座談会】2025年春ドラマを語る!

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第42弾★
ギャラクシー賞マイベストTV賞プロジェクトメンバーが、春の注目ドラマを語ります!

明るく温かく波乱万丈
見どころ満載の新「朝ドラ」

T:新年度に入り1カ月が経ちました。春ドラマも出揃いましたので、注目作品について語っていきましょう。まずは新たに朝ドラがスタートしていますので、そこからいきましょうか。
K:連続テレビ小説「あんぱん」(NHK)は誰もが知るあの魅力的なキャラクター「アンパンマン」を生み出した人物と、その妻の波乱万丈の人生。これは面白くないわけがないですね。知名度の高い実在の人物をモデルにした強みが出ています。初週から幼い2人に降りかかるつらい出来事に驚き、目が離せなくなってしまいました。 けれどどんなに悲しいことがあっても、偉大な業績を成し遂げる人生が待っているのだと思うと、ドキドキしすぎず安心して見ていられます。朝ドラらしい王道のテーマで、半年楽しめそうです。
Y:テンポよく毎日見応えのある朝ドラです。主演の今田美桜はもちろん脇を固めるのも豪華キャストで、特に松嶋菜々子と河合優実の存在感が目を引きます。まだ序盤ですが名言も続々登場しており、どのような物語が紡がれていくか楽しみです。
T:順調なスタートを切ったと思います。家族や友人たちの温かい愛情に包まれながら、主人公がたくましく、そして明るく成長していくという、まさに朝ドラらしい作品になっています。中園ミホのストーリーテリングの上手さが光り、毎回、見どころが詰まっていて、次回が楽しみになります。ただ、主人公の父親役の加瀬亮が早々と退場してしまったのは少し残念。今後、回想シーンで何度も出演してほしいです。
H:誰もが慣れ親しんだキャラクターの生みの親ですから、視聴者の共通認識として、ところどころに「あれ、これって」と思わせるポイントがあるのも嬉しいですよね。夫婦となる2人の距離感はまだまだ遠いですけど、お互いを想い合っている雰囲気がとても爽やかですし、今後の展開にも期待できます。個人的には妹役で出演中の原菜乃華の細かいお芝居が見事だと思いました。姉妹のストーリーにも注目したいですね。

王道も芸術作も癒しも
NHKドラマの懐の深さ

T:土曜ドラマ「地震のあとで」(NHK)はこの記事が出るころには放送は終了していると思いますが、注目作なので再放送があればぜひ見てほしいです。大江崇允は映画『ドライブ・マイ・カー』でも村上春樹の原作を脚本化しましたが、今回はさらに村上の持つ世界を生かした脚本に仕上げ、さらに「その街のこども」の井上剛の演出でドラマ化。4話のオムニバスですが、いずれも喪失感を伴った人物が登場し、その心象風景が退廃的な映像で描かれていきます。見る人を選ぶような難解な作品とも言えますが、このような芸術作を送り出したNHKの懐の深さに拍手を送りたいです。
Y:プロデュース・脚本・演出・音楽の強力な布陣で、村上春樹原作の不思議な世界を表現しており、毎週短編映画を見ているような豪華さです。見る側にも解釈を委ねながら難解な内容を映像にする手法は好みが分かれるかもしれませんが、このような作品を地上波で視聴できる環境は重要ではないかと思います。改めて原作を読み返しましたが、ドラマでは話によって時代設定を変え、一部は続編という形のオリジナルになっており、「1995年から後の日本」を表現している点も興味深いです。
M:ドラマ10「しあわせは食べて寝て待て」(NHK)は難病で思うように働くことができなくなった、さとこ(桜井ユキ)が主人公。居づらくなった会社を辞めパートで働き、収入減を補うために引っ越しをして「団地」にたどり着く。そこで「お節介な隣人たち」と「薬膳」に出会い、自分の体と生活を労わること、マイペースに生きていくためのリソースとスキルを得ていく。伸びやかな団地の佇まい、美味しく健康になる食事、会社でも団地でも、他人同士が互いの気遣いに触れてささやかに支え合うコミュニティになっていくのどかなシーンに心が癒されます。
N:膠原病で週に4日だけ働く女性が主人公なのですが、余命いくばくもないとか、そういう病気は描かれてきたけれど、こういう主人公の本当の姿はなかなかなかったのではないでしょうか。一見、他の人と変わりがないように見えて、実は生きづらさを抱えているという人は、ほかにもいるはずで、このような作品が増えればいいなと思います。
M:第4話では「ネガティブケイパビリティ」というキーワードが出てきました。とかく世知辛い今、レジリエンスを描いているドラマと感じます。

キョンキョン世代の会話に共感
子育て世代の多様な価値観

T:次に民放作品で注目作をお願いします。
N:「続・続・最後から二番目の恋」(フジテレビ)はキョンキョン世代がいつまでもこのようなラブコメディに出られることは、簡単なようでいてそうではないと思います。定年が近づき、今までバリバリ働いていた世代も、自分が期待されないことに気づき始めるわけで、そういう描写がリアルだなと感じました。
K:前作から11年を経ての続編、子役も含めキャストがほぼ変わらずに出演していて、このドラマへのスタッフの気合いが伝わってきます。 脚本・岡田惠和のセリフ回しはさすがで、千秋(小泉今日子)と和平(中井貴一)の会話の空気感はそのままに、年齢を重ねた深みが加わっていて引き込まれます。主演の小泉今日子と中井貴一の実年齢と、主人公の年齢を一致させているので、アラカンの暮らしぶりや心持ちが一層リアルに伝わってきました。前作から視聴者も同じだけ時間を重ねているので、彼らの生き方や変化を通して、視聴者自身の人生を見つめるきっかけにもなりそうです。
H:演出もですが俳優陣の演技も見事でナチュラルに時間経過を感じられるので、すっと入ってきますよね。
T:テレビの視聴者が高齢化しているのを反映してか2回目の再登場になりましたが、相変わらず面白いです。岡田惠和の紡ぎ出す長セリフに、小泉と中井が堂々と応え、さらに独自の味わいをプラスしていく。このふたりの会話のやりとりだけでも大いに笑えます。老いを負に感じず、むしろ前向きに描いていて、今回も上質の娯楽ドラマになっています。
K:火曜ドラマ「対岸の家事」(TBS)は育児と家事を軸に、専業主婦、フルタイムのワーママ、育休中の官僚パパという立ち位置の違いを際立たせた設定が斬新です。彼女らがどのように関わり合いを深めていくのか、楽しみに見ています。多部未華子演じる専業主婦・詩穂は、絶滅危惧種と揶揄されながらも魅力的な人物に描かれ、女性の自立をやみくもに訴えない視点も新しいと感じます。価値観がぶつかるバトル部分をゲーム風のコミカルな演出にするなど工夫されていて、ネガティブになりすぎないのも好印象でした。
N:「専業主婦は絶滅危惧種」というセリフがあったり、わりとドキッとする場面も多いのですが、最初は相反する考えの人たちが、どんな立場でも見えない苦しみが自分と同様にあるとわかる展開で、毎回引き込まれてしまいます。

国際共同制作の相乗効果に期待高まる
報道現場を舞台に何を描くか

T:その他、個別に注目作品があればお願いします。
Y:今期は国際共同制作に注目しています。金曜ナイトドラマ「魔物」(テレビ朝日)は韓国で「梨泰院クラス」をはじめヒット作品を生み出しているスタジオのSLLとの共同制作。愛と欲望をセンセーショナルに描く、とのことですが、従来の韓国ドラマ的な表現だけでなく、日本側の要素もうまく取り入れた見どころが出てくるか、今後の展開に注目したいです。
T:日曜劇場「キャスター」(TBS)はテレビ局の報道現場を舞台に、1話完結で興味深いネタを取り上げ、スピーディーに展開していく。のんなどゲスト俳優がいるのも毎回楽しみです。ただ、社会派というよりは、娯楽に寄せたドラマだと思います。
H: そうですね。そう考えると気軽に見られるかもしれません。個人的には社会派ドラマを期待していた分、展開に無理矢理感を感じてしまいました。1話完結で扱うには取り上げる事件が大きすぎるというか……。海外ドラマの「ニュースルーム」(HBO)を模した雰囲気もあるのですが、ストーリー、セリフ、演出、どれをとっても差を感じされられてしまう。少し見方を変える必要がありそうです。
M:水曜ドラマ「恋は闇」(日本テレビ)はテレビ局の報道番組ディレクターの万琴(岸井ゆきの)と週刊誌記者の浩暉(志尊淳)が連続殺人事件を追う。2人の恋愛と浩暉の過去、さらに浩暉が連続殺人鬼かもしれない、という主軸と伏線が多めの出足でした。時々挿入される志尊淳のキュン専用サービスショットも全体の情報量を増やしていて、油断すると振り落とされそう。万琴の職場の、数字が取れればいいという旧態依然とした番組プロデューサー(田中哲司)や、寄り添うようで現状維持の中間管理職(西田尚美)、スマホで仕事を完結させる若手(小林虎之介)など、癖のあるキャスト陣や、犯罪被害者にカメラを向ける暴力性に万琴が意を唱えるなど、キラキラしていない「テレビ局」への眼差しをどこまで追求するのかも楽しみです。
T:「波うららかに、めおと日和」(フジテレビ)はマンガの原作らしく、軽妙なラブコメディとして楽しめる、今期の拾いもののドラマの1つです。何と言っても、主人公ふたりの純粋無垢さが笑えます。昭和の夫婦観でありながら、現代にも通じる男女の心理が絶妙に描かれているので、今後の展開もとても楽しみです。そして、夫役の本田響矢は、このドラマで人気沸騰の予感がします。
H:同じフジテレビでは「あなたを奪ったその日から」(フジテレビ)に注目しました。我が子を失ったことで復讐を考えてしまうという非常に苦しい状況を北川景子が演じています。「誘拐」や「我が子を失う」というと、今まで「Mother」での松雪泰子や映画『ミッシング』で石原さとみが好演していたのを記憶していますが、本作もそれに迫るような作品を期待したいですね。

膨らむ妄想、ダダ洩れな心の声
注目のコメディエンヌたち

M:「なんで私が神説教」(日本テレビ)は無職から成り行きで高校教師になった麗美静(広瀬アリス)の教育者とは程遠い、やる気のない教師役が新鮮です。深入りしたくはないけど、面倒な火の粉を振り払いたいという一心から問題に対処する静の行動が、事なかれ主義の学校で生徒の心をつかんでいくという展開。「この紋所が目に入らぬか!」と言わんばかりの「神説教」はスマホで検索して寄せ集めたコピペ文章なのに、完成度の高さに感心しつつ笑ってしまいます。心の声がダダ漏れで、表情も豊かなコメディエンヌの広瀬アリスの演技も楽しいです。
H:「霧尾ファンクラブ」(中京テレビ)は茅島みずきと莉子という若手注目俳優2人が共演。同じ人を「推し」ていて、コメディタッチに妄想を膨らませています。「推し活」が一般化した今だからこそ違和感なく見られます。茅島みずきは少しやりすぎのように感じますが、クールな役が多かった分、殻を破るための挑戦というところでしょうか。こうした挑戦的な作品、演技は見ていても楽しいです。
Y:もうひとつ「HEART ATTACK」(フジテレビ)もフジテレビが「ウォーキング・デッド」など大作を手がける米国のエンターテインメント企業・スカイバウンドと共同制作した作品。FODで一挙配信し、地上波での放送も開始しています。近未来の日本が舞台ですが、やや「欧米から見たアジアの近未来」感に寄っている感じもしますが、日本の制作陣とのバランスで、共同制作ならではの魅力が出るといいなと思います。三浦透子の存在感を連ドラで楽しめる点が良いです。
T:新しい朝ドラは概ね好調ということで、これからの展開が楽しみですね。まだどの作品も序盤ですから、今後の展開にも注目していきましょう。

(2025年4月25日開催)
※関東地区で放送された番組を主に取り上げています