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【座談会】2025年夏ドラマを語る!

★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第44弾★
ギャラクシー賞マイベストTV賞プロジェクトメンバーが、夏の注目ドラマを語ります!

“クセつよ”な俳優陣
ミステリアス展開に視聴者くぎ付け

T:本格的な夏の暑さが続いていますが、7月に入り続々と新ドラマがスタートしています。さっそく注目作から語っていきましょう。
N:木曜ドラマ「しあわせな結婚」(テレビ朝日)は松たか子と阿部サダヲが夫婦を演じるドラマと聞いたときは、ほかにもいろんな夫婦が出てきて家庭の違いを描くのかと思っていましたが、ひとつの家に住むひとつの家族を描いていて、そこに段田安則演じる父親、岡部たかし演じる叔父、板垣李光人演じる弟が一緒に住んでいるという設定が意外で驚きました。しかも、一話から松たか子演じるヒロイン・ネルラの過去も示されたら、視聴者としては次が気になって仕方がなくなって当然。これから二転三転するのでしょう。家族での食事シーンも、達者な俳優たちの芝居の見せどころになっていると思います。
K:阿部サダヲと松たか子が夫婦を演じる……このキャスティングにまず期待が高まります。そしてコメディかと思いきやサスペンスタッチで、松たか子の謎めいたキャラに引き込まれました。中年になってからの結婚は、相手に過去があるのは当たり前。それにしても妻の過去は不穏すぎます。独身主義だった辣腕弁護士が、初めての結婚に戸惑いながら妻との距離を縮めようとする姿から目が離せなくなりそうです。妻役の松たか子は謎めいているものの可愛らしく、やはり二人の組み合わせは秀逸。エンディング曲のOasisは懐かしくも「なぜ?」と深読みしたくなる選曲。大石静の描くミステリーと夫婦愛の行方を見守りたいです。
Y:事前情報なしにのんびりした関係性の話かと勝手に思って見始めたところ、明るさの陰にミステリアスで不思議な不穏さを感じさせる画面の中、1話ラストで急にサスペンス展開となり、非常に引き込まれました。松たか子演じるネルラの不思議な魅力と、有名弁護士役の阿部サダヲの「こういう人いそうだな」という感じが相まった面白さがあり、二人の掛け合いのバランスが絶妙。ネルラの家族の、雰囲気が独特な会話劇も見応えがあります。
M:松たか子が妻ネルラを怪演。変な寝相、クロワッサンをわしわし食べる姿、妙に間のある会話にくぎ付けです。夫の売れっ子弁護士兼コメンテーターの阿部サダヲ演じる幸太郎の、職場や奇妙な妻とその家族との生活で見せる姿やテンポのいいセリフや表情にも引き込まれます。段田安則や岡部たかしをはじめ脇を固める俳優陣もクセつよで魅力的。コメディとサスペンスの組合せが新鮮で、スタイリングやインテリアなどもおしゃれ。音楽が入るタイミングもセンスよし。全体として段違いのクオリティの高さを感じます。毎週の放送が楽しみです!
T:殺人事件に絡むミステリーが展開していくという異色の物語に、まずは引き込まれていきます。ひと癖ある妻とその家族、15年前の事件に執念を燃やす刑事など、登場人物の過去も気になります。脚本家、大石静の代表作になりそうな予感がします。

30代女性の終活をよい塩梅のコミカルで描く
70代女性の愛おしいシフターフッド

Y:土曜ドラマ「ひとりでしにたい」(NHK)は孤独死、「終活」という深刻なテーマを、原作マンガに沿ったギャグ的な要素をふんだんに生かしながら、シリアスになりすぎずよい塩梅で表現していると思います。老後をどうするか、そもそも自分はどう生きるかという点について、主人公と同年代の女性だけでなく、両親や同僚などさまざまな性別・年代の人たちの目線から論点が映し出され、幅広い世代にも伝わるものがある気がします。綾瀬はるかのシリアスとコミカルを自在に行き来する演技が光ります。松坂慶子とのラップバトルは見ものでした!
K:30代の終活という刺激的なテーマを、綾瀬はるかが突き抜けたコメディで演じていて、暗くならずに見られます。独身キャリア女性の人生観、死生観を浮かび上がらせ、そこに後輩男性がクールな現状分析を突きつけ、ドキッとさせられます。そして実際に役立ちそうな終活対策や、親の介護等の現役世代にとってのリスクなど情報が散りばめられています。ドラマ開始早々、情報番組とタイアップしてこの社会課題を扱い、安否確認サービスやおひとりさまネットワークの実例を紹介するなど掘り下げていたのも、NHKらしいアプローチだと思いました。
T:プレミアムドラマ「照子と瑠衣」(NHK)は、タイトルからもわかる通り名作映画『テルマ&ルイーズ』をオマージュした井上荒野の小説が原作。映画版の予想不可能な破天荒な魅力とは違い、70歳を過ぎた女性たちのちょっと切なく、そして自由な生きざまが愛おしいシスターフッドドラマです。
Y:風吹ジュンと夏木マリが、高校時代からの友人である70歳の女性2人の逃避行を生き生きと演じていて魅力的です。これまでの人生に区切りをつけて新しい人生へと自由へ踏み出す様子から、ハラハラするような部分がありつつも元気をもらえる気がします。物語はすでに折り返しを過ぎ、どのような結末になるのか楽しみです。

ひんやりした人間模様
“人を診る”芯の通ったドラマ

M:木曜劇場「愛の、がっこう。」(フジテレビ)は木村文乃演じる真面目で堅物な高校教師の愛美とSnow Manのラウールが演じる歌舞伎町でNo.1を目指すホストの大雅の愛の物語。愛美は別れた恋人にストーカーをして会社を辞めた過去があり、抑圧的な父の影がある。大雅は恵まれない環境で育ち、学習障害をケアされずに学校をドロップアウトして字が書けず、弟の病気を理由にお金をせびる母親がいる。そんな二人が出会って、これから恋愛が動き出すようですが、二人の境遇が窒息しそうなくらい重い。傷を抱え清濁混じって生きる二人と、周囲のほの暗くひんやりした人間模様が物語の重心を作り出していて、この重さがとてもいいです。今のところ、夫にモラハラされるたび、バジルの葉をむしって匂いを嗅ぐ愛美の母・筒井真理子の一瞬の狂気に心奪われています。
H:進学校の真面目な教師とホストという2人は、ともに難ありの家族を抱えている。家族だからとその場を取り繕ってはいるものの、いつも自分の意志は反故にされてしまう。2人の出会いがどのように影響しあっていくのか、これからの展開が気になります。個人的には愛美の父を演じる酒向芳の雰囲気のある粘っこさが癖になります(笑)。
N:日曜劇場「19番目のカルテ」(TBS)の1話では、原因不明の不調で整形外科に来たものの、検査しても異常が見られないと何度も返されてきた患者に対して、松本潤演じる医師がやっとその病気を見つけるということを描いていました。患者の病名がわかったときは、これまで苦労が報われたようで、ホッとしたというかカタルシスまで感じてしまいました。病気でなく、人を診るというテーマを掲げているそうで、見ていてそういうことか!とわかりました。
H:松本潤曰く「今のところ手術シーンを撮影してない」というだけあって、新しい切り口の医療ドラマですよね。昨今の政治情勢をみても、医療は数字で語られてしまうことが多い。でも、その現場の医師をはじめ医療スタッフは人を診ている。現代において必要な視点だと思います。今までの日曜劇場とはテイストが違うように思われますが、芯の通ったドラマだと思います。
T:その他、個別に触れたい作品があればお願いします。
私からは「僕達はまだその星の校則を知らない」(関西テレビ)を。学校に派遣された弁護士「スクールロイヤー」という設定はユニークながら、描くのは校則やイジメなど定番のネタ。しかし、すっきりと解決しなくて、主人公の性格と同様にどこかモヤモヤしたままの雰囲気が、リアル感があり魅力的です。主演の磯村勇斗の繊細な演技も見もので、今クールの拾いものになりそうなドラマです。
K:「ちはやふる -めぐり―」(日本テレビ)はヒット作である映画を踏まえ、令和版の高校生競技かるた部を描く企画にワクワクさせられます。前作から10年後の設定で、上白石萌音など前作からの出演者が重要な役割で登場し、クールな現代っ子のめぐる(當真あみ)との出会いがどんな化学変化を起こすのか注目しています。「競技かるた」という古典×スポ根の稀有なジャンルの面白さ、そこに高校部活や青春という普遍性が加わって、見応えがありそうです。 原作者も令和版に関わっているとのことで、映画版と地続きの新たな物語の展開が楽しみです。
H:「ただの恋愛なんかできっこない」(TOKYO MX)は女性恐怖症の上司と匂いフェチの部下の秘密の社内恋愛を描いた作品。マンガ原作ということもあり、なかなかファンタジーな展開もありつつ、細かい心情は丁寧に描いていると感じます。
T:前クールは1本もなかったBLドラマが、今クールは4本もオンエア中(関東地区)。その中から2本をオススメしたいです。1本目はドラマ24「40までにしたい10のこと」(テレビ東京)。タイや台湾などのBLドラマ先進国ではほとんど見られない中年男性が主人公の作品で、日本ならではBLドラマと言えそう。しかし、BL色はそんなに強くはなく、アラフォーのサラリーマンが部下とともに「服の趣味を変える」「恋人を作る」などを1つずつ叶えていくという物語。ゲイでなくても独身男性の誰もが抱く願望がコミカルに描かれていて、ほっこりとさせられます。もう1本は「恋愛ルビの正しいふりかた」(TOKYO MX)。こちらは王道のBLドラマで、高校時代にいじめられた同級生に久しぶりに再会し、復讐をしていくという物語。このふたりに愛がどう芽生えていくのか、今後の展開が楽しみです。
H:「量産型ルカ -プラモ部員の青き逆襲-」(テレビ東京)は「量産型リコ」から続くシリーズ作品。今回は舞台を高校に移しました。幼馴染の瑠夏(賀喜遥香)と流歌(筒井あやめ)は幼稚園からの親友。部活にも入らずだらだらと過ごしていたところに、ふらっと涼みに入ったのがプラモデル部の部室。友情に恋愛に、ごちゃごちゃしている青春時代をさまざまなプラモデルを作りながら乗り越えていく姿はどこか懐かしい気持ちにさせられます。何か大きな展開があるドラマではないけれど、学園生活×プラモデルで爽やかな気持ちになれます。前作に引き続き乃木坂46のメンバーが主演を演じるのも、ファンとしては嬉しいところだと思います。
T:毎年夏ドラマは苦戦するイメージですが、「しあわせな結婚」に特に注目が集まっています。各ドラマがどのような展開になっていくのか、引き続き見ていきましょう。

(2025年7月25日開催)
※関東地区で放送された番組を主に取り上げています