★放懇公式ホームページオリジナルコンテンツ「座談会」第49弾★
ギャラクシー賞マイベストTV賞プロジェクトメンバーが、冬の注目ドラマを総括します!
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他愛もない毎日の尊さ
涙なしには見られなかったエンディング
T:新年度が始まりました!その前に、冬ドラマが最終回を迎えましたので、総括していきましょう。まずは朝ドラからいかがでしょうか。
M:連続テレビ小説「ばけばけ」(NHK)は、時代の荒波に翻弄され、抗い、立ち尽くしながらも、支えあい、育みあい、営まれる人の暮らしの強さや素晴らしさが描かれていました。主人公を軸としたわかりやすいサクセスストーリーではなく、すべての登場人物によって丹念に物語が編まれている重層性や、仄暗く残酷なエピソードの数々を絶対的なユーモアの力で奈落に落とさない絶妙さ。ふじきみつ彦の脚本と村橋直樹らによる演出が素晴らしく、朝ドラ史に残る金字塔ではないかと思います。最終話のエンドロールは涙なしに見られませんでした! 現実世界でも戦争が起きるなどリンクしていて、「だんだん世界が悪くなる」に気持ちが塞ぐことも多かったですが、「他愛もない、ほんに他愛もない素晴らしき日々」に気づかされ、力をもらえた半年でした。
K:朝ドラの主人公が外国人であったことはこれまでもありますが、最後までカタコトだったのは初めてかも。かえってその演出は「ジゴク」「ネガイマス」「オワリニンゲン」など印象的なキーワードとなりドラマのリズムを作りました。あの時代、外国人がどれほど異質な存在であったのかなど、社会背景の学びもありましたが、終わってみるとシンプルに男女が惹かれ合うピュアさが際立ちました。寂しいものや目に見えぬ怖いものに惹かれるふたり、理屈ではないそれらを共有し育てていけたのは幸せだったと思いました。ハンバート ハンバートの主題歌『笑ったり転んだり』が最後までしみじみと心に残りました。キャストは、錦織(吉沢亮)が秀才でありながら絶妙にコメディの一端を担い、司之介(岡部たかし)には苦笑させられっぱなしで、通奏低音として笑いがあったのも良かったです。
N:途中はヒロインのトキ(髙石あかり)よりも、ヘブン(トミー・バストウ)や錦織、司之介や親友のおサワ(円井わん)に焦点が当てられることも多く、トキがほかの朝ドラ作品のような目立つ活躍がないような気がしていました。でも最後の最後に、これはトキによる『思ひ出の記』だったのだとわかって、鳥肌が立ちました。終始、出演者の演技に唸らされた作品です。
Y:トキが語る思い出として「他愛もない素晴らしい毎日」の物語を振り返ると、さまざまなエピソードのリズムや、画面の色彩なども含め、主観的な人間の記憶の濃淡を表していたようにも感じられました。物語の世界を邪魔することなく、静かに絶妙に彩る牛尾憲輔の劇伴が全編を通して素晴らしかったのですが、最終盤にトキの感情があふれ出る場面では、急に音楽の存在感が増し、画面やセリフだけでなく音も含めて、とても印象深いラストになりました。涙なしには見られなかったエンディングの後、第1回につながるラストシーンが見事でした。
“わかる人にはわかる”不思議なドラマ
ミステリー×コメディの巧みな脚本
N:水曜ドラマ「冬のなんかさ、春のなんかね」(日本テレビ)は、1話こそ違和感がありましたが、回を追うごとに見えてくるものが多くて、毎週欠かさず見てしまいました。恋愛について、ここまで深く哲学のように会話をする作品はテレビドラマでは見たことがないし、あれだけ恋愛を描いていたわりには、最後の最後、恋愛感情で結びついていない三人の会話で終わるのも面白いなと思いました。
K:主人公・文菜(杉咲花)に共感しきれないまま見続けていると、別の感情が湧いてきました。現在の文菜から物語は始まりますが、回を重ねるにつれ彼女が過去に深く関わった人物が登場し、過去と現在を行きつ戻りつします。文菜が今のような思考回路になった出来事を目の当たりにすると、人生は連続的であり不可逆であることを思い知らされます。人は人に会ったとき、その人を形作ってきた過去まで把握してはいないことにハッとさせられます。どのエピソードもすぐ目の前にいるかのような会話運びが実にうまい。文学と音楽というメディアも駆使して、説明することなく登場人物の心情が浮かび上がり、その世界に引き寄せられます。人を好きになるということは、なんと残酷でままならないことか。安易なハッピーエンドにはせず、エンタメとは一線を画そうとする脚本・監督を務めた今泉力哉の意思と凄みを感じました。あと、キャストだとゆきお役の成田凌がよかった。文菜に翻弄される優しい恋人を演じ、最後のぞっとする展開も含めた見事な演技でした。
Y:理解しえない他者の中を垣間見るような、不思議なドラマでした。回を重ね、主人公を形作ってきたさまざまな出来事を知るにつれ、共感できない行動の背景や、人の感情の移り変わりの機微を少しずつ掘り下げていくことができ、見応えがありました。ファッションや音楽、文学など、散りばめられる要素からにじみ出る「わかる人にはわかる」といった感じがやや過剰に思えて気になる点もありましたが、このような深夜帯の雰囲気のドラマが地上波22時台に放送されるというのも、編成の変化を感じて興味深かったです。
H:正直難しかったです……。スタート時に浮かんだたくさんの「?」を抱えたまま見続けるパワーを個人的には受け取れなかった。「わかる人にはわかる」という部分、同意します。演出やセリフの端々、衣装に小道具など細かい部分に注力したことに疑う余地はありませんが、ただそれが視聴者として試されているように感じてしまいました……。
T:「ラムネモンキー」(フジテレビ)は中学校の同級生だった3人(反町隆史、大森南朋、津田健次郎)が、当時失踪した教師の謎を追うというミステリーの要素に、すっかりオヤジになり悲壮感さえも漂っている彼らの現在を描いたヒューマンドラマの要素。それがコメディ仕立てで描かれていて、脚本家の古沢良太の巧さが感じられた作品でした。80年代の街の雰囲気と文化が忠実に再現され、ノスタルジー感もたっぷりで、今期一番の拾いもののドラマでした。
N:今の50代は就職氷河期世代。主人公たち3人ともに、現在は人から羨まれる人生は送っていない。だからこそ、亡くなったとされる中学時代の憧れの女性の教師の謎を追うことが、生きるモチベーションになっているというのもわかります。中年の危機を描く作品として面白かったです。
I:1988年に中学2年生だった主人公たちと世代が近いせいか、思い入れたっぷりで見ていました。カンフー映画への憧れとか、たまり場のレンタルビデオ店の猥雑な感じとか、昭和末期の世相風俗の再現性が高いなと感じました。ラストの展開が駆け足になったところは否めないですが、あえて謎を解き明かさずに“中二病上等!”に落とし込んだ結末は、これはこれでよかったと思います。
意外な展開、際立つ個性、端正な映像美
冬ドラマ百花繚乱
T:その他、個別に語っていきましょう。今期最高視聴率となった日曜劇場「リブート」(TBS)は、豪華な俳優陣の迫力ある演技もさることながら、家族愛をテーマにした登場人物のハードな生きざまに引き込まれました。整形手術を受けて違う人物で再出発する“リブート”が主人公だけではなかったなど、意外なストーリー展開も最後まで楽しむことができました。
Y:金曜ナイトドラマ「探偵さん、リュック開いてますよ」(テレビ朝日)はとにかくゆるく独特なエピソードが毎回楽しみでした。謎解きやセンセーショナルな内容でなくても、連ドラを楽しめることがよくわかる作品だったと思います。特に最終回は、父へのメッセージ、オダギリジョーの登場と見どころ満載で、「悪意でロケットが飛ばせれば、この世界が少しでも良くなるかも」 という発想も印象的でした。
T:ドラマ10「テミスの不確かな法廷」(NHK)は発達障害を抱える裁判官・安堂(松山ケンイチ)を通して、「普通とは何か」を問い続けたドラマでした。市井の事件から、最後は死刑が執行された事件の再審まで、法廷シーンもとても見応えがありました。「わからないことをわかっていないと、わからないことはわからない」という主人公の信念に共感を覚えたと同時に、松山ケンイチの卓越した演技に魅せられました。
I:火曜ドラマ「未来のムスコ」(TBS)は時空を超えて我が子が母に逢いにくる、というなんとも荒唐無稽なSFをゆったりほのぼの描くところに惹かれて見ていたら、ラスト2話で物語が急展開。子育ての多様性をタイムパラドックスと掛け合わせているのが新鮮でした。主演・志田未来の上手さを改めて実感しました。
H:土曜ドラマ「パンダより恋が苦手な私たち」(日本テレビ)は原作小説の持つパワーをふんだんに活かした作品だったと思います。動物の求愛行動と人間の恋愛をうまく視覚化してわかりやすく表現されていました。登場人物もどれも個性的で、シシド・カフカはハマり役だったと思います。
T:「東京P.D. 警視庁広報2係」(フジテレビ)は警視庁の広報という部署が舞台の異色のドラマで、最近にしては珍しく硬派な警察ドラマでした。広報とメディア、そして刑事部、公安部との関係の面白さもさることながら、事件の描き方も緊張感があり、とても見応えがありました。season2がすぐに独占配信されるという展開は賛否あるかもしれませんが、ユニークな試みだと思います。
K:プレミアムドラマ「京都人の密かな愉しみ」(NHK BS)は京都の町でロケを行い、舞台となる和菓子店も実在のもの(名前を少し変えている)。リアリティに溢れる京都の四季や折々の祭りなど、映像がとても美しい。京都の町を歩き、京都のバーに入り京都人と話したり、近隣の噂話を聞いているような気持ちになります。シリーズ最新作、今回のテーマは「継承」。何代にも渡る事業を繋いでいく古都ならではの事情や困難さが描かれます。抜き差しならない状況から思いがけない展開となるストーリーテリングはさすが。初登場、パリ育ちの洛(みやこ/穂志もえか)がドラマに新しい風を吹かせ抜群の存在感でした。今後の活躍が楽しみです。「京都がだめになるときは、日本がだめになるときや」という京都人の覚悟に満ちたことばに感じ入る、深みのあるドラマでした。
T:ドラマDiVE「親友の『同棲して』に『うん』て言うまで」(読売テレビ)は写真を通じて仲良くなった高校生が社会人になり、変化していく関係を繊細に描いていて、とてもリアリティがありました。親友から恋人に変わっていく心理の描写も見事で、今期最も見応えのあるBLドラマでした。
H:「令和に官能小説作ってます」(テレビ大阪)は官能小説を取り巻く時代の変化や問題・課題を浮き彫りにした作品でした。表紙絵の自主規制や表現としての比喩など作り手の苦悩そして工夫が描かれ、コミカルだけれど芯がありました。
T:半年の放送を終えた朝ドラ、そして賛否両論の「冬のなんかさ、~」に注目が集まりましたね。すでに春ドラマも始まっています。引き続きチェックしていきましょう。
(2026年4月3日開催)
※関東地区で放送された番組を主に取り上げています